漫画家のあだち充さんの兄、勉さんの半生が漫画に……お酒が好きで多くの人に愛された
丸っこいかわいらしい絵柄で個性的な漫画家たちが描かれていることに加え、当時の執筆現場の舞台裏が明かされているのも本作の特徴だ。漫画雑誌の全盛期で、原稿ができるまで編集者は仕事場に泊まることが普通だった。赤塚さんが率いるフジオ・プロダクションでは、アシスタントや編集者が参加し、『天才バカボン』などのギャグのアイデアを出し合う恒例会議があり、その様子も描き出している。「色んな人がいっぱいいて、色んなアイデアを出し合って、面白いものが生まれていた」
独立後も勉さんとの交流は続いた。夜中に呼び出され、吉祥寺駅周辺で飲みにいくことも多かったという。晩年はがんに侵され、入退院を繰り返した。「亡くなる4日前に会いました。『お前の漫画も読めるようになったな』って珍しく褒めてくれたんですよ」
勉さんは、「かたよったものばかり描いてはいけない」「仕事を断っちゃいけない。描けば、描けるんだよ」と語っていたという。その言葉に背中を押されるように、ありまさんは現在、新たなオリジナル作品を準備している。「娯楽作家として、様々なことに興味を持つ姿勢を大事にしてきた。それは勉さんから学んだことでもある。これからも勉さんの言葉を忘れずに頑張っていきたい」