Jリーグ天王山 勝者はレッズかガンバか
特にリーグ戦が終盤に突入して以降は、優勝へのプレッシャーが増してきたからか、試合運びがさらに堅くなった。チーム最多の12ゴールをあげているFW興梠慎三が、右腓骨骨折で戦線離脱したことも影響しているのだろう。興梠の代わりに李忠成を据えた今月3日の第31節の横浜F・マリノス戦後には、対峙した元日本代表DF中澤佑二がこう語っていたほどだ。 「レッズはあの独特の形のサッカーで、極力リスクを負わない形で臨んできた。ベンチからも李に対して、何度も『戻れ』と指示が飛んでいた」 ガンバの攻撃力か、それともレッズの守備力か。 実は、レッズとガンバは2006年12月2日にも、リーグ優勝をかけて埼玉スタジアムで激突している。レッズが首位、ガンバが2位というシチュエーションも同じだが、異なるのは8年前がシーズン最終戦だったことと、2点差以内の負けでもレッズが優勝できるポジションにいたことだ。 結果はレッズが3対2で逃げ切ってガンバの連覇を阻止し、現時点における唯一のリーグ優勝を手にしている。観客数は6万2241人を記録し、チームカラーの真っ赤に染まったスタンドがレッズを後押しした。 レッズは、そういうホームの地の利を持つが、レッズの中断明けの成績は9勝5分け3敗の勝ち点32、総得点31、総失点18といずれもガンバの後塵を拝している。数字がすべてを物語るわけでないが、現状では、ガンバが優位に立っている。 また、この試合で、もしガンバが勝てば勝ち点差は「2」に縮まり、残り2試合での勝負にもつれ込むが、残り試合の対戦相手を考慮してもガンバが有利だ。 ガンバは前回の対戦で5対1と蹴散らしているヴィッセル神戸をホームに迎え、最終節はすでにJ2降格が決まっている最下位のヴォルティスと敵地で対戦。対するレッズは、チーム史上初となるACL出場権を獲得できる位置につけ、残り3戦を全勝すれば逆転優勝の可能性もあるサガン鳥栖と敵地で、中断明け以降は白星が先行している名古屋グランパスをホームに迎える。サガンは、リーグ戦の通算の対戦成績でも2勝3敗と負け越している天敵だ。 毎年のように終盤戦にドラマが生まれてきたJ1の優勝争いの1ページに、今シーズンも新たな伝説がまた刻まれるのか。おそらくはガンバが猛攻を仕掛け、耐え忍ぶレッズが勝機を見出す展開となるビッグマッチは、土曜日午後2時に運命のキックオフを迎える。 (文責・藤江直人/スポーツライター)