Jリーグ天王山 勝者はレッズかガンバか
チームが明らかに変貌を遂げた理由を宇佐美は「僕らから見ていても、いまは点を取られる気配がない。1点か2点取れれば絶対に勝てるというモチベーションを与えてくれるので、本当に守備陣には感謝しています」と語ったことがあったが、攻撃力は守備陣にも波及効果を与え、後半の13個の白星のうち先行逃げ切りが11回を数えるなど、確固たる勝ちパターンを手にしている。 ガンバは、逆転劇でナビスコ杯を手にして、ベスト4に残っている天皇杯を含めて、三冠に挑戦できる立場にいる。そのモチベーションもチームの推進力になるだろう。 「ナビスコのタイトルを獲ったからこそ、あと2つという気持ちがある」 そう語っていた宇佐美は、レッズとの試合展開を、こう言及している。 「打ち合うこともできますし、最初から手堅くいくこともできますよ」 レッズ戦に向けてガンバは、この15日にはサンフレッチェとの練習試合を行い、日本代表に招集されていたMF遠藤保仁、MF今野泰幸、GK東口順昭を欠く布陣で臨んで3対2で勝利している。サンフレッチェとの練習試合の狙いは、同じ可変システムを採用するレッズ対策。得点者以外は、起用メンバーなどの詳細を非公開にするなど、徹底して情報を管理しながら大一番への準備を整えている。 対照的にレッズは第19節から首位をキープしてきたものの、下位チームと対戦した第26節以降の4連戦で1勝1分け2敗と苦しみ、勝ち点を伸ばすことができなかった。昨シーズンのレッズは、最後の3試合で3連敗を喫し、優勝争いから6位にまで転落した。12失点を献上するなど、攻守のバランスが完全に崩壊したことが原因だった。今シーズンはベガルタ戦こそ4失点を喫して敗れたが、その後の3試合を1失点のみに抑えて悪夢の二の舞を阻止できたのは、守備の再建を託されてサンフレッチェ広島から移籍した西川の存在に負う部分が大きい。 ここまでの31試合でレッズが許した総失点は「27」でマリノスと並ぶリーグ最少を誇っている。昨シーズンが「56」だったことを考えれば、劇的に改善されている。マイボール時には「3‐6‐1」から「4‐1‐5」に変化し、3バックの左右からサイドバックに転じて積極的にオーバーラップを仕掛けてきた槙野と森脇良太が、今シーズンは自重するケースが多い。前出の水沼氏も、今シーズンのレッズの変化を「昨シーズンの苦い経験が堅守の糧になっている」と指摘する。 「槙野と森脇が攻撃参加して最終ラインが2枚になれば、それだけ失点のリスクが高まる。特に前線でボールを失った際には、カウンターの格好の標的となる。その点で今シーズンの槙野と森脇はチーム全体の守備のバランスを最優先に考えているのだと思う。槙野と森脇だけではなく、通常の『3‐6‐1』のときに左右のワイドを務める選手たちも無理には前へ行かないケースが目立つ。常に攻撃的であることがベスト、というわけではない。今シーズンのレッズが何よりも『結果』を優先させていることの証であり、勝つために『らしさ』を封印することも辞さなかったからこそ、いまのポジションにいるのだろう」