広島のドラ1加藤のノーノー未遂は成功への予兆?!
広島のドラフト1位の加藤拓也(22、慶応大出)が7日、マツダスタジアムで行われたヤクルト戦でプロ初先発、9回一死までノーヒットノーランを続ける快投を演じた。新人の初登板ノーノーは、現在、中日投手コーチの近藤真市が1987年8月9日のナゴヤ球場での巨人戦で達成して以来、30年ぶり2人目となる快挙だったが、惜しくもバレンティンに阻まれた。体調不良のジョンソンの代役先発だったが、強いインパクトを与えるピッチング内容でプロ初勝利を飾り、緒方監督はローテ入りを約束した。過去のノーノー未遂投手には、成功した大物投手がズラリ。“外れ外れ1位”で入団した加藤の未来は明るい?! マツダスタジアムは異様な空気に包まれていた。 9回にマウンドに上がった加藤がノーヒットノーランを続けていたのである。 「会場の応援が聞こえたので心強かったです」 大記録まであと3人。先頭の坂口のバットを折ってショートゴロ。いよいよアウト2つである。 トリプルスリー、山田には、この試合7つ目となる四球を与えた。続く4番、バレンティンへの初球だった。高めに甘く入ったフォーク。バレンティンは「狙っていた」という。 WBCで大活躍した年間最多本塁打男が一枚上手。打球は三遊間を真っ二つ。あと2人で偉業を逃した。続く雄平にも一、二塁間を破るタイムリーを打たれて135球で降板。あとを受けた中崎が二死満塁を切り抜けて4-1でゲームセット。完封も逃したが、堂々のプロ初勝利である。 「(勝てて)ほっとしました。(9回一死からヒット?)こんなもんだなと思いました。先輩方のいいプレーに助けてもらっていましたし、そんなに甘くないとは思っていました」 大記録を逃した加藤は、少し照れながら、淡々と振り返った。 7四球と大荒れだったが、それが初対戦のヤクルト打線を戸惑わせた。 試合後、真中監督は「荒れているようでフォークではストライクが取れる。絞りにくかった」と、語った。 最速151キロの球威十分のストレートに加えてカウント球と勝負球の両方に使えたフォークが効いた。 「フォークがストライク、ボールと、しっかり投げられたので、それがよかった」 配球で最も重要な初球に半分以上、フォークを使い、しかも、その落ち方を微妙に変化させる。投球フォームも独特で左足を一瞬止めてグローブを膝に当てるのでタイミングを取ることも難しく、ヤクルト打線は困惑した。トリプルスリーの山田も2三振である。 ノーノーにつきもののファインプレーにも支えられた。5回には、バレンティンの三遊間を襲った打球は、三塁、小窪のグラブを弾くが、深い位置でカバーした田中が、一塁へ素晴らしいスローイング。7回には中村の三塁線を強襲したゴロを小窪が横飛びで抑えた。 昨秋のドラフトで広島は1位でソフトバンクの田中正義を外し、外れ1位でロッテの佐々木千隼も外して指名した外れ外れ1位。キャンプ、オープン戦を通じて、150キロ級のストレートの馬力と、落差のあるフォークは評価されたが、あまりに制球が悪く、球数を要するため、開幕直前に2軍落ちを告げられた。今回は、ジョンソンの体調不良による緊急抜擢だったが、その“荒れ球”を逆手にとった。緒方監督も、「凄い度胸。これで次がなかったら嘘」と、ローテ入りを確約した。 2014年5月2日のロッテ戦で、西武時代の岸孝之が記録して以来のノーノーは逃したが、実はノーヒットノーラン未遂は、大投手の代名詞でもある。