栃木遺体事件でも、犯人たちの“足”は「防犯カメラ」が抑えた! その中核「SSBC」の実力
---------- 30年を超える記者生活で警察庁・警視庁・大阪府警をはじめ全国の警察に深い人脈を築き、重大事件を追ってきた記者・甲斐竜一朗が明らかにする刑事捜査の最前線。最新著書『刑事捜査の最前線』より一部を連載形式で紹介! ---------- 「寺社液体事件」犯人の行動はパラパラ漫画のように再現された
防カメ捜査の中核担うSSBCと「撮れ像」
警視庁の防犯カメラの画像捜査で、中核を担ってきたのは2009年4月に発足した捜査支援分析センター(SSBC)の機動分析1係(23区担当)と同2係(多摩地区担当)の計約40人で、24時間態勢で無線を聞きながら事件発生に備えてきた。 殺人や強盗などの重要犯罪や社会的反響の大きな事件では自主的に出動するが、各警察署の要請を受けて現場に出ることも多い。生命線は、画像データを抜き取ってコピーする資機材セット「撮れ像」と、都内の防犯カメラ設置状況を独自に登録した「防犯カメラ設置情報システム」だ。 センターの特別捜査官を中心に開発された「撮れ像」は2014年3月に導入された。パソコンやポータブル録画装置などの資機材セットで、当初はアタッシェケースに入れて持ち運んでいたが、現在は機動性を高めるためリュック型になっている。あらゆる防犯カメラやドライブレコーダーに対応し、データの抽出や再生ができる「優れもの」(警察庁幹部)だという。 第1機動捜査隊の「ICAT(アイキャット)」や、第3機動捜査隊の「ハヤブサ」など、初動捜査で犯人追跡を担う執行隊や本庁各課、警察署の部署に「撮れ像」を配備している。 「防犯カメラ設置情報システム」は、東京都内のそれぞれの警察署管内で、どこに防犯カメラがあるかを地図上にプロットして把握している。商店街や個人宅、ガソリンスタンド、コンビニ、金融機関など外に向かって撮っている防犯カメラの設置場所に関する情報だ。システムはセンターで管理しているが、すべての警察署で見ることができ、新たな防犯カメラの設置場所が分かれば随時、更新している。 発生があるとセンターに加え、各部署がシステムで現場周辺の防犯カメラの設置状況を確認して出動する。現場では「撮れ像」を駆使し、犯人の姿と逃走方向が確認できれば、カメラからカメラへと展開し迅速にたどり着くことが可能だ。現場ですぐに確認できなければ広い範囲で画像を回収し、持ち帰って詳細に解析して犯人とみられる人物を捜し出す。 解析に当たっては、人相や体格、服装などのほかに、歩き方のくせである歩容(ほよう)によって複数の画像に写った人物を同一と特定することもあるという。