史上89人目のノーヒットノーランを達成した戸郷翔征(巨人)、プロでの活躍を予感させた高校日本代表戦の快投【主筆・河嶋宗一コラム『グラカンvol.21』】
大学代表の投手とひけをとらないレベルになっていた戸郷の最終学年の投球
直球は140キロ前半から常時140キロ後半の速球を投げ込み、最速149キロを計測。そして変化球は130キロ後半のスプリット。130キロ後半のカットボール、130キロ前半のスライダー。いずれも手元で大きく変化し、高校日本代表打線から次々と三振を奪います。5.1回を投げて9奪三振、2失点の投球でした。根尾 昂投手(大阪桐蔭-中日)から3球三振を奪った時の歓声は凄いものがありました。 戸郷投手と対戦した高校日本代表の打者は大学代表との壮行試合でレベルの高い投手と対戦済みですが、試合後にどの打者に聞いても「大学代表の投手と変わらないレベルでした」と脱帽の様子でした。この快投に戸郷投手は「自己最速の149キロが出たのは、たくさんのお客さんがいたサンマリンの雰囲気から出たものだと思います。根尾君から三振を取れるとは思っていなかったので嬉しかったですし、今日は自分の力強い真っすぐで押していけと監督からもいわれていたので、それができてよかったです」と語った。 この試合でプロ志望を宣言した戸郷投手ですが、ドラフトでは巨人から6位指名と決して高い評価ではありませんでした。戸郷投手はテークバックをとった時の右腕が背中側に大きく引いて、ぶん回す「アーム式」と呼ばれる投球フォーム。このフォームで活躍する投手は少なかったこともあり、評価は上がりませんでした。ただ、速球の勢い、変化球の精度の高さはドラフト上位指名を受けた高校生と遜色ないレベルだったので、結果を残せば、見方は変わるだろうと思っていました。 すると1年目から急成長を遂げ、一軍登板を経験。高卒2年目からローテーション入りし、昨年はWBC代表にも選ばれ、2年連続で12勝を記録。昨年まで通算43勝。今年はノーヒットノーランを含め4勝を記録。防御率1.86はリーグ6位と今シーズンも好成績を残します。 今はこの世代を牽引する戸郷投手。高校時代から伸び悩むことなく、一歩ずつ階段を登っていく姿を見て、とても嬉しく思います。このノーヒットノーランを機に、投手タイトルをすべて狙える成績を残すことを期待しています。