タイでEV拡大に賭け、中国新興が強気の投資-日本車の牙城崩すか
(ブルームバーグ): 中国の新興電気自動車(EV)メーカー、哪吒汽車(Neta)の幹部は3月下旬、バンコク国際モーターショーで大勢の聴衆を前に今年の販売台数は前年比2倍超の3万台になる、と強気の見通しを示した。
最近までタイでもほとんど存在を知られていなかった哪吒汽車は政府の補助金を背景に、昨年のEV販売で比亜迪(BYD)に次ぐ2位に躍り出た。同社の目標は日本車が牙城としてきたタイにおける中国メーカーの勢いを示している。
Z世代向けにエンターテインメント機能などを充実させた新型スポーツ用多目的車(SUV)などが並ぶ自社ブースで、哪吒汽車現地法人幹部のワン・チェンジェ氏は新規参入増などで競争が激化しているがEV需要は伸びている、と熱弁。稼働したばかりの年産2万台規模の現地工場も状況次第で能力を倍増する可能性があり、「5年も待つ必要はないと感じている。すぐ実現するだろう」と楽観的な見方を示した。
ブルームバーグ・インテリジェンスによると、市場規模年80万台程度のタイでは昨年、EV販売が前年の1万台弱から約7万6000台に伸び、中国メーカー全体のシェアは1割を占めるまでになった。それに伴い80%台半ばを誇っていた日本勢のシェアは8.2ポイント減と急落した。
タイを含む東南アジアでは伝統的に日本車が強く、国によって80-90%にもなる圧倒的シェアを築いてきた。日本国内や米国と並ぶドル箱市場だが、タイでの中国勢の台頭は他の国でも政策次第で新規参入組が勢力図を一気に塗り替え得ることを示している。
日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、東南アジア諸国連合全体の2022年の新車登録・販売台数は前年比18%増の約327万台。世界販売に占める割合は約4%で、国別ランキングにあてはめると4位の日本と5位のドイツの間に位置する規模となる。
自動車調査会社カノラマの宮尾健氏は東南アジアは日本にとって重要な市場で、タイで起きたことを踏まえれば「安穏としているわけにはいかない」と警鐘を鳴らす。