熊楠×宿泊で魅力発信 大学生が地域ビジネス研修、和歌山県田辺市
世界的な博物学者南方熊楠の魅力を世界に発信するゲストハウスを企画せよ―。そんな命題を受けた大阪経済大学の学生が和歌山県の田辺市と白浜町を訪れ、ビジネス案作りに挑戦。宿泊施設に謎解きや郷土食の体験などを組み合わせたさまざまなアイデアが生まれた。 【熊野古道沿い クリたわわ 和歌山県田辺市中辺路町高原の記事はこちら】 各地の地域資源や課題、文化を知り、魅力を最大限に引き出す新規ビジネスを開発する同大学経営学部「地域ビジネス研修」の取り組み。1~4年生の13人が参加した。現地研修は10日から2泊3日であり、現状を調査したり、地元経営者の話を聞いたりした。 熊野には多くの訪日客が訪れるが、田辺市街地に長期滞在する人は少ない。田辺の三偉人の一人、熊楠も一部に熱心なファンはいるものの、観光客への認知度は高くない。こうした課題を踏まえ、大学生は3班に分かれてビジネス案を作った。 3年の淺野真暉さん(25)の班は、熊野古道を歩いてから田辺市街地に戻ってきた外国人客がターゲット。熊野三山巡りを祝ったとされる「山祝い餅」の提供や地域産業の体験などを盛り込みながら、熊楠の魅力も伝えたいと考えた。 淺野さんは「熊楠の尽力で熊野の森が守られた。古道を歩いてきた人に伝えれば、感じるものがあるはず。古道のコミュニティーからじわじわと熊楠の魅力を広めたい」と話した。 4年の奥野智大さん(26)の班は、既存のゲストハウスに熊楠に関する謎解きが体験できる2次元コードを配布し、宿泊客の興味を引きつける仕組みを提案した。 「熊楠は粘菌が有名だが、民俗や宗教など研究が幅広いと知った。現代の最先端の思想を先取りした部分もあり、私たちが学ぶことは多い。関係施設に足を運んでもらい、より深く熊楠を知るきっかけをつくりたい」とアイデアを練った。 1年の増田流音さん(18)の班は、外国人客に加え、熊楠を知らない日本人学生をターゲットにした。古道の閑散期に集客する狙いがある。 研修を担当する辻晶子講師は「20年以上熊楠を研究してきたが、学生が予想以上に興味を示してくれた。今後も継続し、紀南の活性化にも貢献できればうれしい」と話した。
紀伊民報