世界競争力ランキング2023で過去最低となった日本。遅れるIT化、方針を明確にしない政府よりも危険なこととされることとは
日本人の基礎学力は世界のトップクラス
日本人の能力がわずか30年間でこれほど急激に落ちてしまったはずはない。実際に、OECD(経済協力開発機構)が行っているPISAという小中学生を対象にした学力テストの結果を見ると、これが分かる。 直近の2018年調査では、数学的リテラシーは世界第6位、科学的リテラシーは第5位だった。読解力は前回から下がったものの、OECD平均得点を大きく上回っている。このように、日本人の基礎的な学力は、依然として世界トップクラスなのである。 日本人は、このように高い潜在的能力を持ちながら、それを発揮できない経済・社会環境に置かれてしまっているのだ。 言い換えれば、かつて強かった日本が凋落した原因は、1990年代の中頃以降に取られた政策の誤りにある。 1990年代の中頃以降、政策面で何が起きたかは明らかだ。円安政策を進めたのである。これによって、企業のイノベーション意欲が減退した。 企業がイノベーションの努力を怠ったために、日本人が能力を発揮する機会を失ってしまった。これこそが、日本経済衰退の基本的なメカニズムだ。 この意味で、いまの日本経済の状態は異常なのである。そして、政策のいかんによって変えられるものなのだ。 写真/shutterstock ---------- 野口悠紀雄(のぐち ゆきお) 1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省。72年エール大学でPh.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専攻は日本経済論。近著に『2040年の日本』(幻冬舎新書)、『超「超」勉強法』(プレジデント社)、『日銀の責任』(PHP新書)、『どうすれば日本人の賃金は上がるのか』(日経プレミアシリーズ)、『プア・ジャパン』(朝日新書)、『「超」創造法』(幻冬舎新書)ほか多数。 ----------