きょう判決『女性監督』『闇の人物ナンバー2』青葉被告の妄想の正体とは「被告の半生」と「100時間超の裁判で語られた凶行の経緯」【京アニ放火殺人事件】
強盗事件で実刑判決 そして『闇の人物ナンバー2』との出会い
京アニ事件を起こす7年前の2012年、茨城県内のコンビニエンスストアで2万円を奪い強盗容疑で逮捕された。
この強盗事件でも刑事責任能力の有無が重視されたが、取材班は、当時検察が起訴の根拠の一つとした精神鑑定書を関係者から独自に入手した。鑑定医が「責任能力がある」と判断したやり取りがある。 【精神鑑定書より】 「どのように捕まったの?」 「自首しました」 「何時間後に?」 「10時間後」 「なんで直ぐに自首しないの?」 「『遊ぶ金が欲しかった』と供述するために、インターネットカフェで遊んだという事実を作るため」 計画的な犯行だったことがうかがえる。鑑定医は「責任能力を十分保持している」と結論づけた。 実刑判決を受けて刑務所に収容された青葉被告。そこでも新たな妄想と出会った。 (青葉被告)「闇の人物ナンバー2。ハリウッドやシリコンバレー、官僚レベルにも人脈がある。闇の世界に生きるフィクサーみたいな人」 青葉被告は闇の人物ナンバー2という架空の存在から監視されていると思い込み、刑務所内では問題行動も目立った。それでも出所後の2016年、小説を完成させて京アニ主催のコンクールに応募した。ところが結果は落選。闇の人物が京アニに落選を指示し小説のアイデアが盗まれたとも錯覚した。 落選後の投稿を見ると。 【青葉被告の投稿より】 「裏切り者やパクった連中は絶対に許さない」
犯行直前 逡巡した13分間「自分みたいな悪党でも小さな良心が」
そして京都へと降り立った青葉被告。訪れたのは事件の3日前(2019年7月15日)だった。計画を練り上げるためだったという。 現場を下見して犯行道具を購入。道を尋ねたり店員に話しかけたりするのは最小限に抑えた。「証拠を残したくない」という理由だった。ガソリンを購入した際は「発電機に使うため」と嘘もついた。 ところが犯行直前、スタジオの前に着いた青葉被告は、その場に座り込んだという。 (青葉被告)「ためらった。自分みたいな悪党でも小さな良心があった。ただこの10年間、働いて、やめさせられて、刑務所に入れられ、小説を送ったら叩き落されてパクリもあった。やはり、ここまできたら、やろうと」 逡巡した13分間。引き返す時間は十分あったはずだった。こうしたことから検察は「たしかに妄想はあったものの、犯行を思いとどまる力や善悪を区別する力を凌駕するものでは到底ない」と切り捨てた。
去年12月、検察は論告で「日本の刑事裁判史上、突出して被害者数も多い」などと指摘。死刑を求刑した。一方の弁護側は「青葉被告は妄想の世界で生きていた」として、心神喪失で無罪、または刑の減軽を求めた。 注目の判決は1月25日午前10時半から言い渡される。 (2024年1月24日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特命取材班スクープ』より)