都市郊外のベッドタウンは要注意...プロが教える「1秒でも早く売却すべき家」の特徴
空き家の賃貸化は損をする
そして、こうしている間にも全国各地で空き家は増加し続けています。総務省の住宅・土地統計調査によれば、2023年の空き家数は900万戸で、前回調査(18年)から51万戸増え過去最多となりました。 また、総住宅数に占める空き家の割合も2023年は13.8%と過去最高となり、住宅の約7分の1を空き家が占める事態となっています。1993年の空き家数は448万戸でしたから、この30年で空き家は倍増していることになります。 野村総合研究所の予測では、2028年に空き家数は1000万戸を突破。その後1277万戸(2033年)、1554万戸(2038年)と増え続け、2043年には1861万戸で空き家率は25.3パーセントと、なんと「4軒に1軒が空き家」となる未来が待っているとしています。 リフォームやリノベーションをして、賃貸に出すといった選択肢は、経済合理的にはあまりよい結果を生みません。なぜならたいていの場合、割に合わないからです。 一定の築年数が経過していれば、空き家になった後そのまま賃貸に出すのは不可能で、大中小のリフォームが必要になります。例えば建物30坪・4LDKといった典型的な一戸建てについて、屋根や外壁などの外回りを一通りやり替えた場合はざっくり150~200万円。 内装の床・壁・天井の刷新で約200万円、キッチンや給湯器・ユニットバス・トイレ・洗面化粧台といった水回りの更新でおよそ400~450万円程度かかります。これら全てを行うとなると750~850万円と、思いのほか莫大な金額になるのです。 部分的にリフォームを行うにしても、そうした投資額を何年で回収できるか計算してみてください。想定賃料はネットで簡単に調べられると思います。近隣で同条件の賃貸住宅の賃料がいくらか見てみましょう。 仮に8万円だとすると年間賃料は96万円。リフォームに500万円かかる場合、そのコストは5.2年で回収できることになります。つまり労力とコストをかけても5年経過するまではマイナスとなり、それ以降やっと収支がプラスになるわけです。 実際には不動産屋さんに支払う仲介手数料(1か月分)や毎月の管理費(月5000円程度)がかかりますので、投資回収の時間はもっと長くなります。こうしたことを考慮すると、ある程度の賃料が取れる立地でないと、とうてい割に合わないことに気づくでしょう。月4万とか5万円程度の賃料では、全く投資に見合わないということです。 さらに、これから空き家が増加することが確実で、同様の賃貸物件や売り物件といったライバルの増加も必至であることを考慮すると、現在の想定賃料を時間の経過とともに下げざるを得ないことも念頭に置く必要があります。だからこそ、競合が増加する前に、できるだけ早く売却するのが、最も理にかなった選択となります。 ただしこのような考え方はあくまで経済合理性のみを優先した場合であり、現実には「相続でもめてしまい処分できない」「思い出が詰まっている」「仏壇がある」など様々な理由で、なんとなく処分が先延ばしになってしまうというケースが現在も、そしてこれからも、かなりの割合で発生せざるを得ないだろうと思います。 こうした事態を防ぐには例えば、親の生前に「遺言」を準備してもらい、いざという時にはそれに従って機械的に空き家をはじめとする財産の処分を進められるようにしておくのがベターです。ただ子供の側からそうした提案をするのはいかにもやりにくいというか気が引けることもあって、なかなか難しいところです。 相続放棄といった手もありますが、現行法では、不動産だけを相続放棄することはできず、預金など財産全てを放棄するか、全て相続するかのどちらかですので、よく考えて選択をしましょう。
長嶋修(不動産コンサルタント)