チョーキューメイが語るTikTokバズから次へのステップ、ビルボードライブと横浜への想い
Billboard Live YOKOHAMAは2020年のオープン以来、横浜随一の音楽スポットとして愛されてきた。みなとみらい線「馬車道」駅直結の好アクセス、美味しい料理やお酒も楽しめる世界標準のライブレストラン。海外の超一流はもちろん、新進気鋭の邦楽アーティストも独自にブッキングし、若年層のオーディエンスも日々詰めかけている。今回は新企画『Live Heatseekers』でビルボードライブ初出演を果たしたチョーキューメイに密着。「貴方の恋人になりたい」のバイラルヒットで飛躍を遂げた4人組に、ヴェニューと横浜への想いを語ってもらった。 【画像を見る】ローリングストーン誌が選ぶ「歴代最高の500曲」
偶然のアイデアが生んだ大ヒット
ビルボードライブとNTT DOCOMO Studio & Liveが共同開催する新企画『Live Heatseekers』。このイベントは、急上昇中の新人アーティストが集まる「Billboard JAPAN Heatseekers Songs」チャートから、まさに次のステップへと駆け上がろうとしている注目アーティストが毎回出演する。今回の第1弾として選ばれ、5月11日にBillboard Live YOKOHAMAでライブを行ったのは、2020年に結成された4人組バンド、チョーキューメイである。 落語の「寿限無」が由来のユニークな名前を持つ彼らは、麗(Vo)、れんぴ(Key)、藤井ごん(Ba)、空閑興一郎(Dr)からなるバンドである。彼らの1stフルアルバム『するどいささくれ』(2022年)に収録された「貴方の恋人になりたい」は、TikTokを中心にバイラルヒットを果たし、日本だけでなくアジア全体にリスナー層を広げた。前述の「Billboard JAPAN Heatseekers Songs」チャートでは通算5回の首位を獲得している。 麗:高校を卒業して、音楽の専門学校に入る予定だった2020年にコロナ禍になってしまい、なかなか学校へも行けない中、とにかく音楽を発信する状況が欲しくてメンバーを集めたのがバンド結成の経緯です。れんぴは高校時代の先輩で、一緒にバンドを組んでいた時期もありました。空閑は、下北沢DaisyBarのブッキング担当に「誰かいい人いませんか?」と相談したところ紹介してもらい、高校時代の同級生で同じ軽音楽部だった藤井ごんは、最初のベーシストが抜けた後に加入して今の編成になったという感じです。 チョーキューメイは、それぞれが異なる音楽的ルーツを持っている。麗はボカロやamazarashiに影響を受け、れんぴはフュージョンやR&B、エレクトロ、メタルなど幅広いジャンルを聴いて育った。藤井はアニソンを中心にボカロなどを好み、空閑は中高時代に吹奏楽部でクラシックを経験した後、さらにフュージョンやファンク、エレクトロなど様々な音楽を吸収してきた。 麗:曲の作り方はいろいろです。例えば「心を照らせ!」は、まずビートを決めてからコードやメロディを考えた曲の一つ。でも、大抵は私がギターの弾き語りで作って(スタジオに)持ち込むパターンが多いですね。 れんぴ:アレンジは、セッションしながら固まっていくこともあります。リハスタで、曲の合間など各々が自由に演奏していたら、それを例えば麗が「それ、いいな」と思って録音して、家に持ち帰ってメロをつけてくるとか。 藤井:自分は専門学校でジャズを一応学んでいたので、セッションのときなどその経験が生かされているのかなと思います。 バイラルヒットを記録した「貴方の恋人になりたい」は、麗が2021年の冬ごろに弾き語りで作っていたアイデアが元になっている。彼らがこの曲に着手したのは、アルバム『するどいささくれ』の制作時期で、曲数を埋めるためにストックから引っ張り出し、シンプルかつリズミカルな方向でリアレンジを施した。サビはBメロを1オクターブ上げただけの潔さが特徴だ。 麗:Bメロがいい感じだったんだけど、サビがなかなか思いつかなくて。だったらそのままオクターブ上げてみよう、という話になって。とにかく急いでいたし、こういうのは難しく考えずにシンプルにやったほうがいいよね、って(笑)。 サビの後、突然リズムがサンバ調に変化するのもユニークで、これもセッション中の遊び心から生まれたアイデアである。 空閑:サビが3回もあって全部一緒なのはくどいなと(笑)。スタジオでの作業もだんだん飽きてきたので、とりあえずサンバキック踏んどけ、みたいな感じでふざけたら、れんぴがそこに乗っかってきて、ジャズを通っているごんだって黙っちゃいないじゃないですか。 こうして生まれた偶然のアイデアを積極的に活かすことで、彼らの音楽性はユニークで独創的なものとなっている。 麗:もし私が1人DTMで音楽を作っていたら、ここでサンバのリズムを入力しようとは思わないでしょうね(笑)。バンドとして4人揃ってスタジオに入って曲を作る意味を見出すためには、メンバーそれぞれの遊び心を積極的に取り入れていきたいですね。 「ヒット曲を生み出そう」と狙ったわけではなく、肩の力を抜いて作った楽曲が世界中で聴かれている現象について、彼らは次のように語る。 れんぴ:リリースしてからTikTokなどで話題になるまで1年ほどかかっているんですよ。なので、まさかここまで話題になるとは正直思っていなかったですね。ありがたいことだなと思いますし、良い曲なら後からでも気に入ってもらえるのだなと感じました。 麗:この曲が話題になったおかげで、フェスなどに呼んでもらう機会も増えたし、今回のビルボードライブ出演もそうです。今までの自分たちの活動範囲を超えて規模が大きくなってきている気がします。 藤井:この曲をきっかけに、ほかの楽曲を聴いてもらえる機会が増えたことも嬉しいです。 サブスクやストリーミングが普及した現代において、たとえリリースから時間が経っても良い曲であれば発掘されやすい状況になっている。ネクストブレイク楽曲にフォーカスした「Billboard JAPAN Heatseekers Songs」は、無名のニューカマーをリスナーが見つけ出すのに一役買ってくれる。 れんぴ:サブスクの「おすすめ」に上がってきた楽曲から、全然知らなかったアーティストの曲に出会える機会が増えています。以前は友達にいい曲を教えてもらっても、TSUTAYAへ行って血眼になって探していましたけど(笑)、今はサブスクで検索すればすぐ聴けるのはありがたいです。 麗:私はTikTokを見るのが好きで、無名のアーティストでも「いい曲だな」と思ったらすぐShazamして後でしっかり聴きます。自分がそうやっているように、私たちの曲も誰かに見つけてもらえると思っています。