「悪口が書かれた義父のメモを見て」娘を連れて家出した高橋里華が義父母の介護に戻ってきた理由
ほかにも、「カニがお尻をつねってる」なんて、意味不明な言動も増えていきました。でも、認知症の人に「そんなわけないでしょ!」と正論をぶつけても、いいことはないんです。そんなときはお尻を軽くつねって「カニさん取れたよ!よかったね」と、義父の言動を受け入れて対処していました。 ── 意味不明な言動が繰り返されると、こちらも感情的に否定してしまいそうです。高橋さんが、いつも真摯に対応できたのはなぜでしょうか。
高橋さん:意味がわからなくても受け入れて対処したほうが、食事やおむつ替えなど、その後がスムーズに進むんです。それは真面目だった義父の性格や、祖父母の介護経験を振り返っての判断でした。 ── いままでの介護の経験を活かした対応だったのですね。 高橋さん: 「祖父母の介護でしてあげられなかったことを、義父母にしてあげたい」と思いながら介護してきました。そうすれば、「祖父母の介護への後悔が少しは薄まるかもしれない」と、かすかに期待していたから。
でも、介護って、こちらが「こうしたい」と思っていても、介護される人の性格や病状によってベストな対応は異なります。だから、やってあげたいことができない場面もたくさんありました。 ただ、最期まで家族に愛されながら、安らかに旅立っていった義父母の姿を思い起こすと、天国の祖父母に「私、頑張ったよ」って、いまは胸を張って言えます。祖父母の介護で学んだことは、義父母の介護にできる限り活かせたし、後悔が少しは薄まったかな。
■「血がつながっていなくても」介護したい気持ちが持てる訳 ── 自分を育ててくれた親の介護も大変だと聞きますが、高橋さんが義理のご両親の介護をそこまで頑張れたのはなぜでしょうか。 高橋さん:義理の両親とは血のつながりはありませんでしたが、ずっと根底に尊敬の気持ちがありました。料理上手でお花が趣味だった義母は、いつも着物をパリッと着こなす憧れの女性でした。義父はとても紳士的で優しく、ユーモアあふれる人で。母子家庭で育った私は、お似合いの義父母が仲睦まじく過ごしている佇まいや雰囲気に、憧れと尊敬の気持ちを抱いていたんです。