「ずっと生き続ける銭湯に」 1度は廃業決めたが…企業が引き継ぎ再開へ 長野県塩尻市の「桑の湯」
6月末に閉店し、後継者を募集していた塩尻市大門一番町の銭湯「桑の湯」を、東京などで古い銭湯の改修や経営の代行をする「ニコニコ温泉」(静岡県伊東市)が引き継ぐことが決まった。桑の湯4代目の桑沢弘幸さん(53)と共に会見したニコニコ温泉の真神友太郎社長(51)は「地域に根ざして、今後ずっと生き続けられる銭湯にしていきたい」と抱負を語った。設備の見直しなど進め、年内の再開を目指すという。 【写真】塩尻市の「桑の湯」。奥の煙突は銭湯のシンボルとして住民に親しまれてきた
桑の湯は1929(昭和4)年に創業。塩尻市内外からまきで沸かす湯を楽しむ多くの客が訪れ、親しまれてきた。10年近く前から、桑沢さんがまき作りや火の管理、かまや煙突の掃除といった作業を80代の母節代さんらと担ってきた。昨年夏前に桑沢さんが体調を崩したことや、タンクやろ過機などの老朽化もあり、廃業を決めた。
しかし、周囲の惜しむ声や、地元のまちづくり会社から「壊してしまえば回復は不可能」と指摘を受けたことなどから、後継者を探ることに。銭湯経営経験がある―などの条件で募集したところ、5社から応募があり、8月中旬、ニコニコ温泉に決定した。桑沢さんは「どこも情熱があり悩みに悩んで決めた。今までの桑の湯や地域のことを一番考えてくれた」と決め手を語った。
真神社長はこれまで数回桑の湯を訪れたといい、地元に溶け込み、客と温かいコミュニケーションを取るといった「日常」が体現され、都市部の銭湯にはない良さに引かれた―と語る。「桑沢さんや地元の方と話す中で、桑の湯がこれまでどれほど大事なものだったかを強く感じた」と話した。数年かけ黒字化を目指すという。
桑沢さんは「町の銭湯として頑張っていってほしいという気持ちでいっぱい。この町の灯を再びともしてほしい」と思いを託した。