煩悩はなくなりました…現役時代は生き急いだ60代独身・元商社マン。一転、老後は「年金月16万円」で穏やかに暮らすも、人生最後に「地元へ敗走」のワケ
夢の詰まったマイホーム
60歳で定年退職したAさんは夢のマイホームを建築します。土地は地方ということもあり、比較的安く購入できましたが、建物は細部にもこだわったため、総額は3,000万円まで膨らみました。貯金1,000万円と退職金で2,000万円、残りは15年間の住宅ローンでまかなう資金計画です。独身にもかかわらず貯蓄が少ないのは、浪費家であることと、過去の女性関係によるものです。 定年後は再雇用などの道もありましたが、定年と同時にすっぱりと仕事を辞め、年金は60歳から受け取り始められるよう繰り上げて受給し、収入内で支出を収めようと決めていました。 Aさんの月々の老後生活資金は、以下のようなものでした。 収入項目 収入金額 支出項目 支出金額 年金 16万円 住宅ローン 6万円 食費 4万円 水道光熱費 1万円 交通通信費 1万円 娯楽費 3万円 医療費 1万円 雑費 1万円 収入合計 16万円 支出合計 17万円 宣言どおり、しっかりと収支のバランスがとれているAさん。「年を取ってきたし、仕事を辞めたせいか、現役時代の煩悩がなくなりました」ハッハッハと笑います。 「穏やかな暮らし」からしか得られない幸せ Aさんの生活は、仕事に私生活にと生き急ぐように過ごしていた退職前とうって変わりました。積極的に地域の人たちと田畑の耕作や地域の寄り合いを通じて交流を図り、贅沢をすることもなくなりました。地域になじみ、幼少期の憧れを叶え、理想の生活を送ることができたのです。貯金も約1,000万円を残しているため、経済的にも余裕があります。現役時代も老後も好きなように生きられて、自分は勝ち組だと信じていました。 しかし、移住から3年を経過したある日から、その生活は崩れていったのです。