高校駅伝男子 三重・稲生、「自主性」育み23年ぶりの都大路に挑む
男子第75回、女子第36回全国高校駅伝競走大会(毎日新聞社、日本陸連、全国高体連など主催)が22日、京都市のたけびしスタジアム京都(西京極陸上競技場)を発着点に行われる。三重県からは、男子は23年ぶりに稲生が、女子は3年連続で鈴鹿が、いずれも3回目の出場を果たす。全国の高校生ランナーが憧れる都大路を舞台に、県勢の躍進が期待される。【渋谷雅也】 【2024全国高校駅伝】男子出場校の顔ぶれ 四半世紀近く閉ざされた扉を開けた鍵は「自主性」だった。強豪校から異動して3年目の中武隼一監督(40)が稲生を2001年以来の都大路に導いた。 県予選は7区間全て2年生を起用する大胆な布陣で23年ぶりに制した。「走っている姿が大人のように感じた」と選手たちの成長に手応えを感じていた。 県内の公立校で唯一、体育科がある稲生。グラウンドには主要な競技会と同じ1周400メートルの全天候型トラックがあり、「全国の公立高校と比べてもこれだけ恵まれた環境はありませんよ」と語る。 ただ、甘んじることはなく、中武監督は「競技を通じて人間的成長を遂げるため、選手たちが自分たちで考えて、行動して取り組むようにしている」と選手の自主性を育むことを目指してきた。 全体練習の開始前には、選手が互いに課題や目標を発表し合う。週末と月末には選手のみでミーティングを開き、それぞれが反省点を挙げて話し合う。 いずれも監督の指示はなく、選手たちが取り組み始めたのだという。広瀬聡真(2年)は「最初は失敗もあったが、今は自分たちで先のことを考えて自主的に動いている」と話した。 稲生は1997年と2001年に全国大会に出場後、しばらくすると低迷期が続いた。中武監督が就任1年目の22年もトップと16分以上離れた13位だった。だが、前回23年は1位と約7分差の4位に上がると、24年は伊賀白鳳の4連覇を阻み、優勝をつかんだ。 県内の強豪で全国にも知られる伊賀白鳳こそ、中武監督の母校であり、前任校だった。伊賀白鳳の前身、上野工で監督を務めていた町野英二さんの薫陶を受けた中武監督は09年から恩師の下でコーチを務め、12年に町野さんが亡くなった後は監督を引き継ぎ、12年と13年に全国大会で2年連続3位に輝いた。 町野さんは、走るために必要なものを自ら考える「強さ」を求め、自主性を重んじた。中武監督も学校は変わっても恩師の教えを伝えると、選手たちも応えるようになってきた。 稲生の選手たちは都大路での目標に「2時間6分30秒、20位台」を掲げる。尾宮将馬(2年)は「120%の力よりも、自分たちの今持っている力を出して挑戦したい」と気負い過ぎず、力を発揮することを目指す。 「私から目標を伝えたわけではない。選手たちが掲げた目標だけに向かって走ってもらうだけ」と中武監督。「これから自分たちで新たな伝統を作れる楽しみがありますよ」とほほ笑んだ。