「私は計画魔」双子の母として、プロゴルファーとして 有村智恵が語る出産と未来
4月に双子の男の子を出産した有村智恵。ツアー14勝を誇る名手はいま、初めての育児に奮闘している。原江里菜とともに大会の発起人である「KURE Lady Go Cup 2024 ~Let's MOVE 30's~」(11日)で解説を務めるのが、ママとしての初仕事。出産と育児、プロゴルファーとしての今後を語った。 【画像】おなかが“ふっくら”だった頃 「これが母性なのかな」――。そんな実感が膨らんだのは、我が子に会うために出産から間もない身体を引きずるようにして新生児集中治療室(NICU)へ向かう時だったという。「私は双子で帝王切開だったので、想像していた出産シーンとは全然違って。手術台の上で淡々と生まれた感じだったんですよね」。実際にそれぞれを抱き上げて重みを感じるまで数日を要したから、触れることができた瞬間の喜びは何物にも代えがたかった。 愛おしい子どものことを話すだけで笑顔になれる。「もう、『可愛い』っていう言葉のもっと“上”の言葉があったらいいのにって思います。こんなカワイイ生き物がこの世に存在するんだって」。母や姉、親戚の協力もあり、育児の負担も軽減されていると感謝する。最近は幼い兄弟も目が見えるようになってきて、お互いの存在を認識しつつあるとか。「ひとりを抱っこすると、『何で僕は抱っこされないの?』みたいな顔になって泣き始めたり…」。日常生活の何気ないひとコマで成長を感じられるのがうれしい。 3カ月ほど経過した現在、ゴルフはもちろん、復帰に向けたトレーニングも全くしていないと明かす。「一番難しいなって思ったのが、私は(産後でも)本当に動けたんですよ」。身体を動かそうと思えば、すぐにできそうな思いはかねてある。それでも“我慢”しているのは、多くの先輩ママゴルファーからの助言を踏まえてのことだ。 骨盤が安定していない状態で早めに始動すると身体を痛めやすかったり、数年後に影響が出る可能性があることを経験談として教えてもらった。「逆に今後復帰するために、いま丁寧にやっておきたい。私、もともと“計画魔”なので。最低でも4、5カ月はあけたいなと思っていますし、(慎重に)身体を整えていって、クラブを握るのもこんな感じで…と段階を踏んでやりたい」と今後を見据える。 前日9日には、2022年12月に第1子を出産して今季開幕から復帰している宮里美香と久しぶりに再会。ツアー転戦時の育児について、現在進行形で聞けるのは大いに参考になった。「いま一番会いたいのは、アン・ソンジュなんです」。日本ツアーでも大活躍した36歳は、有村と同じように双子を出産してから母国韓国でツアーの第一線に復帰を果たしている。 究極の目標は日本ツアーでも過去6人しか達成していないママとしての優勝だが、それが容易ではないことは自分が分かっている。「それは相当な夢ですよ。まだ、いまは到底ツアー優勝とか大きなことは言えない状況。まずはツアーに出場できるレベルまで戻したい」。謙虚に足元を見つめながら、力強く言い切れることもある。 「選手(として)だけでガムシャラにやっていた時は、世間的に大きなことを成し遂げたい気持ちが強かった気がする。いまは子どもたちにどう見せるかをメインに考える。ほかの人がスゴイって思ってくれなくても、子どもたちがカッコいいって思ってくれればいい。純粋に努力した結果として試合でいいショットが打てる、いいパットが決まる、そういうのだけでもいいなと思う。“ゴルフを通じて幸せな人生を歩む”っていうのが一番成し遂げたいことなのかな」。母として臨むキャリアの新たなステージを心待ちにした。(茨城県つくばみらい市/亀山泰宏)