【疑問】そもそも「年金」ってどう決められるの?【2024年は財政検証】
【解説】厚生年金、在職老齢年金…検証予定の内容をチェック
つづけて、厚生労働省が発表した年金制度の改革に向けて議論の土台となる項目から、注目度の高い改正案をそれぞれ紹介します。 ●被用者保険(厚生年金保険)の対象拡大 被用者保険とは、会社員などが加入する厚生年金と健康保険などのこと。 現状、従業員101人以上の企業に勤務して週20時間以上働き、月収が8万8000円(年収換算で106万円)以上といった条件を満たす必要があります。 2024年10月から被保険者数51名以上の企業に勤める短時間労働者も社会保険加入が義務付けられますが、これに該当しない労働者への社会保険適用が検討されています。 今回の検証では、従業員規模の要件を撤廃したうえで、就労時間や月収が一定水準を超える全員が加入可能になった場合の給付水準が算出されるとのこと。 ほとんどの労働者が国民年金だけでなく厚生年金もあわせてもらえるようになる一方、事業主側の拠出は増えると見通されています。 ●保険料率の基準額上限を引き上げ 保険料率の基準額である「標準報酬月額」とは、会社員が受け取る1か月の報酬を32の等級(健康保険は50等級)に区分した金額のこと。 これは、会社員や公務員が加入する厚生年金保険や社会保険料の受給額を算出するうえで基礎となる金額です。 現在の制度では、負担が過大にならないように上限が設けられ、厚生年金については65万円が上限。この引き上げが検討されています。 これにより将来受給する年金が増えるだけでなく、個々人の保険料収入が拡大することによって全体の給付水準も高まる可能性もあります。 ●在職老齢年金制度の緩和または廃止 働く高齢者の厚生年金受給額を減らす「在職老齢年金制度」の見直しも議論されています。 2021年4月、政府は高年齢者雇用安定法を改正。企業に対して「70歳までの就業機会確保」を努力義務として義務付けました。 現在は賃金と厚生年金の合計が月50万円を超えると年金が減額となるため「働き損」を敬遠して就業時間を調整する人がいますが、世は少子高齢化時代。 働き手を確保するため、希望すれば高年齢者が働ける環境整備が目的の1つです。 ただし、廃止すると年金給付が増えるため国庫への負担も増えます。そのため、支給停止となる基準を50万円から引き上げるなどの緩和策も改正案の1つとして検討されています。 それぞれ、実現への課題点もあわせて議論されています。今後の動向に注目したいですね。