「カミングアウトをして、多くのサポートをもらって…」米国スケーター、アンバー・グレン“GP初優勝”の舞台裏…25歳できめたトリプルアクセル
性的マイノリティであることのカミングアウト
「またカミングアウトもして、自分のメンタルの状態についても、正直に告白していました。すごく多くのサポートをもらって、みんなから応援してもらっているのに、なかなか結果が出せなかったんです」 グレンは2019年の年末に性的マイノリティであることをSNS上で告白。またADHD(注意欠如・多動症)であることなども公表していた。こうして個人的な悩みなども率直にオープンにしてきた彼女はファンからの好感度が高く、同じような悩みを抱える若いアスリートにとってのロールモデル的存在にもなっていた。 「2020年くらいにスケートをやめることも考えていたのですが、パンデミックで何もできなくなり、どれほどスケートが好きなのか再確認しました。それでオフアイスのトレーニングをしっかり続けて、氷の上に戻った時、トリプルアクセルを跳ぶという目標をたてたんです。最後に自分が新しいジャンプ、3ルッツを降りたのは11歳の時だったので、新しい挑戦が新たなモチベーションになるかと思って」 練習で降りるのに、2か月半かかったという。 「でもそこから、試合で成功させるにはもっと長い時間がかかりました」 「精神的な問題を抱えていても、13歳じゃなくても、新たなチャレンジができるのだということを示したい気持ちもありました」 会場にはいつも2時間前に入り、ウォームアップには人一倍時間をかける。SP後は会見が始まるのを待つ間に、会見室でもローラーで脚を丹念にマッサージしていた。 「25歳は人間としては若いけど、スケーターとしてはもう若くない。些細なことが、不調につながったりするので体のメンテナンスにはとても気を付けています」
樋口新葉とグレンのやり取りで会場は和やかに
この大会でいち早くファイナル進出を決めたのは、23歳の樋口新葉だった。スケートアメリカで初のGPタイトルを手にした樋口は、このフランス大会ではSP3位、フリー1位の総合206.08で2位に上がった。 25歳のグレンが安定したトリプルアクセルを跳んでいることは、刺激になったのだろうかと聞くと、樋口は目を輝かせて笑いながら「跳びたいと思いました!」と答えた。 その答えを聞いたグレンは、北京オリンピックでトリプルアクセルを降りた樋口に「あなたこそ、私にインスピレーションを与えてくれたわ!」と応対。会見は和やかな笑い声に包まれた。 201.35で自己ベストスコアを更新して3位に入ったのは、21歳の住吉りをんだった。昨シーズンこの大会で日本女子として初めて4回転を成功させた住吉は、この大会で3年連続3位に入賞。「現状としてはできることを精いっぱいやったと思います」と演技を振り返った。グレンと住吉はこの後中国杯でまた顔を合わせ、ファイナル進出をかけて戦うことになる。
(「フィギュアスケート、氷上の華」田村明子 = 文)
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