【#佐藤優のシン世界地図探索㊽】プーチンから読み解く地球の未来
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT OpenSourceINTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * 2月8日、プーチン露大統領が、元米FOX TV司会者のタッカー・カールソンのインタビューを受けた。そこでプーチンの放った言葉は、地球の未来を左右するかもしれない。 ――佐藤さんから頂いたプーチンのインタビューのロシア語を日本語に丁寧に翻訳した資料を読みました。 プーチン大統領は、『私の理解ではあなたはかつて、その組織で働きたがっていました。CIAがあなたを雇わなかったのは幸いだったかもしれません』と、カールソンがCIAに就職しようとして落ちた事実を調べてあった。怖いインタビューでした。プーチンがこのインタビューを受けた目的はなんですか? 佐藤 カールソンは非常にトランプに近い人です。だから、米大統領選が盛況となり、しかもウクライナ戦争開戦2周年を迎える直前に、プーチンはトランプが大統領に当選する可能性を踏まえて必要なシグナルを出してきたということです。 ――そのシグナルとは何ですか? 佐藤 戦局がロシアにとって有利な状況にあるいま、プーチンはこの戦争を手仕舞いする可能性を模索し始めたんです。一言で言うと「交渉を始める用意がある」と。そして、それは2022年の「イスタンブール合意」に戻らなければならないということです。 ――イスタンブール合意は、22年3月末にトルコの仲介で、ロシアとウクライナが直接対話した和平合意ですね。そのイスタンブール合意が駄目になった理由を、プーチン大統領はこう言っています。 「私たちはイスタンブールでウクライナと交渉し、合意しました。しかも、交渉グループのトップであるアラハミー氏は、(中略)今でも与党の派閥のトップです。彼はまた、ラーダ(国会)で大統領の派閥を率いています。この文書にも署名しています。 <私たちはこの文書に署名する準備ができていたが、当時の英国首相ジョンソン氏がやってきて、ロシアと戦争したほうがいいと言って、私たち(アラハミー氏たち)を説得した。ロシアとの戦いで失ったものを取り戻すために必要なものはすべて与えてくれる。そして我々はこの提案に同意した>。いいですか、アラハミー氏の発言は公表されていました。彼はそれを公言しました」 ジョンソン元英国首相の横やりが入り、和平は成立しなかった。これはなぜですか? 佐藤 ジョンソン元英首相が4月9日に首都キーウへ予告なしにやって来て、「戦え」となり潰れた話ですね。英国にはこの戦争を続ける事に利益があったわけです。それは、英国が考える"世界秩序"に貢献すると思ったからでしょう。 ――その世界秩序とは、米国とは違うモノですか?