世界の頂点へ高まる期待 大和ハウス杯囲碁十段戦 井山裕太十段就位式「自分自身高める」
2~4月に打たれた囲碁タイトル戦「大和ハウス杯 第62期十段戦五番勝負」(産経新聞社主催)を制し、6期ぶり6度目の十段を獲得した井山裕太十段(35)=王座・碁聖=の就位式が6月13日、東京都港区の明治記念館で行われた。出席した関係者らは井山十段の3冠復帰を祝うとともに、国際棋戦でのタイトル獲得を期待する声が上がった。 式典では、日本棋院と関西棋院から十段就位を認める允許状が授与されたあと、産経新聞社の近藤哲司社長から賞金目録と賞杯が渡された。 近藤社長はあいさつの冒頭、「6期ぶりの十段獲得おめでとうございます」と久しぶりの十段奪還を祝福。今シリーズの対局を「世代を超えて2冠同士が激突し、井山さんがカド番で迎えた第4局で屈指の名局が生まれた。最終第5局でも最強・最善を追求した井山さんが3冠に復帰された」と振り返った。また、今月下旬から準々決勝が行われる国際棋戦の爛柯杯に井山十段が日本勢として唯一勝ち残っていることに触れ、「世界の舞台でも大いに力を発揮していただきたい」と激励した。 日本棋院の小林覚理事長は、井山十段の戦いぶりについて「盤上に無駄な石がない。寝てると思っていた石たちがまた活躍しだす。それだけたくさんのことを考えて打っている」と解説。井山十段が5月に35歳の節目を迎えたことを挙げ、「これから体力などいろんなものと勝負していかなければいけない時が来た。日本棋院は百周年を迎えたが、最強で最高の棋士が井山裕太だと思う。井山さんが世界チャンピオンにならなくて誰がなるのかと、囲碁ファンはみんな思っている」と世界の頂点に立つことを期待した。 華道家元池坊総務所の事務総長を務める関西棋院の池坊雅史理事長は「華道も囲碁も長い歴史を持つ伝統文化。囲碁は打つ人の人間観や美的意識が表れる。井山さんの人間性、柔らかく謙虚な人格は本当に素晴らしい」と話した。 謝辞に立った井山十段は「久しぶりに十段戦五番勝負の舞台で戦えることが本当にうれしかった。芝野さんの実力や成長を感じる非常に厳しい五番勝負だったが、最後は運が味方してくれた」と述懐。「私も30代半ばを迎えて年齢のことを言われるようになったが、下の世代とも戦っていけると結果で示せた。自分自身を高め、世界戦でもいい戦いができるようにやっていきたい」と国際棋戦での勝負を見据えた。 ■五番勝負を振り返る