《私のがん予兆》大腸がん・子宮頸がん・卵巣がん、がんサバイバー3人が語る「異変の瞬間」
その後、再発なく元気に過ごしている善本さんだが、性交時の異変について我慢せずにパートナーと話していればと、悔やむこともあるという。 「出血や痛みを伝えると相手の性能力を否定することになり、男性は性行為に自信を持てなくなってしまうのではないかと思ったんです。 それで一人で我慢していましたが、こうした異変は命に関わる場合もあるので、遠慮せずにパートナーと話せばよかったと今は思います」
転院が遅れていたらどうなっていたか【卵巣がん】
水っぽい“おりもの”が2週間続いた……二宮さん(48) 3人目は、2022年に卵巣がんが見つかった二宮さん。身体の異変を感じて近所のクリニックを受診したが、なかなか異常が発見できなかったという。 「ある日、尿漏れしたのかな?と思うような水っぽいおりものが出て、それから2週間近く、徐々に量が増え続けたんです。それまで粘度のあるおりものしか経験がなかったので、おかしいなと思い、9月に近所の婦人科に行きました」(二宮さん、以下同) しかし経膣エコー検査でも異常は見つからず、子宮頸がんと子宮体がんの検査を受けることに。 「検査は2つとも問題がなく、先生から更年期障害かもしれないから、薬を飲んで様子を見ましょうと言われました。しかし、おりものはなかなか治まらず、3回ほど徐々に強い薬に替えてもらいましたが状況は変わりませんでした。 とても不安でしたが、先生に『悪い病気ではないから大丈夫ですよ』と言われていたので、しつこく『大丈夫ですか?』と尋ねるのも気が引けたので様子を見てしまったんです」 ところが、おりものに血が混じり薄茶色になってきたため、2023年2月に思い切って大きい産婦人科を受診する。
「実は私の友人の妹さんも同じ近所の婦人科に通っていて症状が好転しなかったため、転院したところ、卵巣がんが見つかったという話を聞いたんです。友人からその話を聞いてまずいなと感じ、その場で転院の予約を取りました。 あの話を聞かずに転院が遅れていたらと思うと怖いですね……。長く診てもらっている主治医だと、遠慮してしまうこともありますが、不安を感じたら迷わず別の先生に見てもらうことがとても大切だと感じました」 転院先で検査すると、4cm程度の卵巣の腫れを指摘された。ここでも子宮頸がんと子宮体がんの検査を受けたが特に問題はなかった。 「念のため腫瘍マーカーとMRIを受け、翌月に結果を聞きにいくと、卵巣がんの疑いがあると告げられ、大学病院を紹介されたんです。ショックでしたね」 紹介先の大学病院で、卵巣がんの疑いで間違いないので手術を、という話に。初めのクリニックを訪れてからすでに半年が経過していた。 「大学病院で卵巣と子宮、周囲のリンパ節の切除手術を受け、ステージ1~2の卵巣がん、それにステージ1の子宮体がんも見つかりました。術後は半年間抗がん剤を続け、昨年の9月から経過観察中です。 がんの発見まで紆余曲折ありましたが、思い切って別の先生に相談したことで命拾いしました。診断に不安があれば躊躇(ちゅうちょ)せずに別の病院に行ってみるべきだと思います」 がんの予兆といえど、普段の体調の変化の中に埋もれてしまうような小さな変化も多く、見逃してしまうことも少なくない。特に女性の場合は、婦人科系の症状だと受診を先送りにしがちだ。 少しでも不安を感じていたら、早めに病院で検査を受けたり、複数の先生に相談したりすることが大切なのだ。 取材・文/井上真規子