速いマシンを作り出すため、ドライバーに求められる“良いフィードバック”とは? カギは「言葉のチョイス」と「走りの客観視」
国内外で実績を積んだトップレベルのドライバーたちがひしめくスーパーフォーミュラ。しかしその中で好結果を残せる者はほんの一握りであり、リザルトがこれまでの実績や実力に見合っていないドライバーの方が多いと言ってもいい。それほどまでに、このカテゴリーは難しい。 【動画】2024年スーパーフォーミュラ第4戦富士:決勝ハイライト スーパーフォーミュラは車両がワンメイクとなっており、ドライバーの実力も拮抗しているが、それが逆にカテゴリーとしての“難しさ”を増幅させている。マシンのセットアップ、ドライビングスタイル、気象条件……さらにそれらの中に枝分かれされる様々な要素が複雑に掛け算された結果、ほんのわずかな差が生まれ、それが結果に結び付いている。そのため事前のテストではマシンのフィーリングやタイムが良くても、実際のレースウィークになってコンディションが変わると、不可解な程に調子を落とすドライバーも珍しくない。 そういった不調の原因を特定するのは、前述の通り無数の要素が存在するため容易ではないだろう。ドライバーのドライビング技術なのか、チームのデータ解析力なのか、はたまた誰も責められないような“不可抗力”なのか……。その答えが見出せず、多くのチームやドライバーが頭を抱えている。
ドライバーが自分のドライビングを理解していれば、色々な“判断”ができる
スーパーフォーミュラに限らずモータースポーツにおいては、ドライバーとエンジニアがいかにコミュニケーションをとって“速いマシン”を作り上げていくかが基本中の基本だ。ただそのコミュニケーションの世界は奥が深い。ドライバーからのフィードバックと、エンジニアの解釈との間に齟齬が生まれると、マシンのセットアップがうまくいかなくなってしまう。 第4戦富士の前に開催された富士公式テストで、とある興味深いコメントをしたドライバーがいた。ルーキーの木村偉織(San-Ei Gen with B-Max)が、“ドライビングの軸”を作るためのロングランをしていたと話したのだ。 「ドライビングもよく分からない中でセットアップをしたところで、走り方が変わるとクルマのフィーリングも変わってしまいます。例えばブレーキングポイントが10m、20m変わると、フロントにかかる荷重なども変わってきてしまいます」 「富士は僕が今まで乗ってきたカテゴリーとは運転の考え方が違うと感じました。具体的にはコーナーへの進入からターンインにかけての向きの変え方なのですが、そこが見つかった時に、自分が求めていたクルマの動きと、現実に起きていることが違っているんだと思いました」 そう語っていた木村。同じくスーパーフォーミュラ参戦1年目である岩佐歩夢を担当するTEAM MUGENの小池智彦エンジニアも、そういった自分のドライビングスタイルを客観的に理解するようなアプローチは、ルーキーかどうかにかかわらず非常に重要だと感じている。彼はその理由を次のように説明した。 「あの(木村のような)考えを持っているドライバーは個人的にすごく強いと思います。それはルーキーだからではなく、全ドライバーに当てはまることだと思います」 「ドライバーって、経験を積めば積むほど『クルマでどうにかしてほしい』という気持ちが強くなると思います。ただセットアップは何かを良くしたら他が悪くなるものなので、基本的にはどうバランスを取るのか、どう妥協するのかになってきます。もちろん、セットアップ自体の全体的なレベルアップも必要ですけどね」 「ドライビングの軸が固まっているドライバー、自分のドライビングを理解しているドライバーであれば、『ここは(ドライビングで)詰められるけど、ここはクルマでしか(改善)できないよね』など、そういった色々な判断ができると思います。最悪なのは、ドライビングでカバーできる領域をマシン(セットアップ)の方でカバーしてしまって、ドライビングでカバーできない部分をマシン側でもカバーできていないことです」 「『ここはアンダーステア』『ここはオーバーステア』『ここはブレーキで奥までいけない』『ここは車高が低すぎる』と言われてその通りに直したからといって、良くなるとは限りません。それこそドライビングが変わってしまうと、クルマの状況も変わってしまうので」 「自分のドライビングがどうなっているかを自分で判断した上で、それをエンジニアに伝える……それが真のフィードバックだと思います。岩佐選手はルーキーですけど経験があるので、それができています」 また小池エンジニアは、根っからのクルマ好きである岩佐が車両の構造をしっかりと理解している点もフィードバックに活きていると語る。小池エンジニアは昨年リアム・ローソンを担当してタイトル争いを演じたが、ローソンに対してはファクトリーでメカニックらと共に車両の機構について説明する機会を設けたという。
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