バレー新リーグが「世界最高峰」となり得る条件とは-開幕したSVリーグの将来性
滝口 隆司
日本におけるバレーボールの男女新リーグ「SVリーグ」が今秋、開幕した。「2030年に世界最高峰のリーグ」となることを目標に掲げるが、その道のりは険しい。世界トップクラスの人気と実力を誇るイタリアの他、欧州主要国や南米のブラジルにもプロリーグが存在する。まだリーグのプロ化にも踏み切れない日本が、頂点へ登り詰めるための条件とは──。
日本リーグ、Vリーグと看板は変わり……
日本に初めてバレーの国内リーグが誕生したのは1967年のことだ。その3年前の東京五輪では、「東洋の魔女」と呼ばれた女子日本代表が金メダルを獲得。バレー人気が高まり、国内きっての大企業が自社のチームを編成し、新リーグに次々と参戦した。 変化が表れたのは90年代だった。サッカーは93年にプロ化に踏み切り、地域密着のJリーグを創設した。これに刺激を受けたバレーも、94年に日本リーグを発展的に解消し、Vリーグと名称を変えた。 ところが、Jリーグと違ったのは、プロ化を実現できなかったことだ。従来の企業チームが中心となった運営が続き、ファンにはサッカーほどの「改革」イメージを印象づけられなかった。 追い打ちを掛けたのが、日本経済のバブル崩壊だった。そのあおりを受けて、各企業が運動部の休廃部を次々と決定した。日本のバレー界を率いてきた男子の富士フイルムや日本鋼管、女子の日立やユニチカなどが相次いで消滅していった。 そのような社会情勢の下、男子の新日鉄堺がクラブチーム「堺ブレイザーズ」として再スタートするなど、新しい動きもあった。2016年には「スーパーリーグ」というプロリーグを2年後に創設する構想も打ち出された。だが、プロ化の賛同は得られず、企業チーム中心のリーグ運営から脱皮することはできなかった。
「SVリーグ」の名称に込められた理念
昨季までのVリーグが再編され、新リーグは1部を「SVリーグ」、2部を「Vリーグ」と呼ぶことになった。SVリーグには男子10チーム、女子14チームが顔を並べる。「S」は、「Strong、Spread、Society」の3つの頭文字であり、「強く、広く、社会とつなぐ」との理念を示している。 開幕前の記者会見で、大河正明チェアマンは「世界最高峰のリーグを目指した新たなスタートです。バレーボールの魅力を存分に楽しんでいただきたい」と述べた。 サッカーのJリーグやバスケットボールのBリーグの運営に携わった経験を持つチェアマンである。では、どんな基準で「世界最高峰」を目指すというのだろうか。 大河氏の説明によれば、経営力やガバナンス力を強化し、総入場者数、総売り上げで世界最高峰を目指すという。その上で、加盟チームが世界クラブ選手権で優勝し、五輪やネーションズリーグに出場した各国代表選手の数が一番多いリーグになることが目標だ。