バレー新リーグが「世界最高峰」となり得る条件とは-開幕したSVリーグの将来性
求められる地域での普及活動
日本も、ビジネス規模を拡大するのであれば、地域の土台が必要だ。サッカーは、スポーツ少年団が発足した当初から各地での競技普及に力を入れた。バスケットも小学生向けの「ミニバス(ミニバスケット)」を広め、底辺層の拡大に注力してきた。それがJリーグやBリーグの成功につながっている。 しかし、多くのスポーツは学校の部活動と企業スポーツが中心であり、地域への浸透に苦慮している。バレーもその一つだろう。 笹川スポーツ財団の昨年の調査「子ども・青少年のスポーツライフ・データ」によると、バレーを「年1回以上」したことがある10代の推計人口は181万人。2001年の調査では279万人だったのが、20年余りで100万人近くも減ったということになる。 少子化が進む中、多くのスポーツで競技人口の減少が叫ばれている。急速に競技の裾野がしぼんでいけば、当然ながら観戦人口も減っていき、ビジネス展開は難しくなるのではないか。
15歳以下のユースチーム保有を義務づけ
文部科学省は、昨年度から公立中学校の部活動を地域のクラブに移す取り組みを始めた。一番の課題は、部員の指導や引率で週末も休めない教員の負担だ。しかし、現状ではその役割を引き受ける地域の指導者や受け皿となる組織は少なく、改革は難航している。 SVリーグでもこうした問題の改善に目を向けるべきだ。新リーグに加盟するクラブへのライセンス交付にあたっては、15歳以下(U15)のユースチーム保有を義務づけている。今後は育成や普及の活動をさらに拡充し、競技環境の整備に力を入れてほしいものだ。 これまで日本のバレー界は、代表チームの活躍を起爆剤にして注目を集めてきた。だが、4年に1度の五輪だけで普及を進めるにも限界がある。タレントのように扱われる選手に頼るばかりでは、人気も長続きしないだろう。 リーグの発展には、最高級の選手とプレー、ビジネスの成功が欠かせない。ただ、その条件をそろえて持続させていくには、1人でも多くのバレー少年や少女を育て、長く親しんでくれるファンや愛好家を増やす必要がある。「世界最高峰」への近道はない。足元を見つめ、地道な努力を続けるほかないはずだ。
【Profile】
滝口 隆司 毎日新聞論説委員(スポーツ担当)。1967年大阪府生まれ。90年に入社し、運動部記者として、4度の五輪取材を経験したほか、野球、サッカー、ラグビー、大相撲なども担当した。運動部編集委員、水戸支局長、大阪本社運動部長を経て現職。新聞での長期連載「五輪の哲人 大島鎌吉物語」で2014年度のミズノスポーツライター賞優秀賞。2021年秋より立教大学兼任講師として「スポーツとメディア」の講義を担当。著書に『情報爆発時代のスポーツメディア―報道の歴史から解く未来像』『スポーツ報道論 新聞記者が問うメディアの視点』(ともに創文企画)がある。