【西本聖】「無理をさせたくない」起用は当然も苦戦原因にも 先発早川はボールゾーンに投げる技術を
<ラグザス presents 第3回WBSCプレミア12:侍ジャパン7-6キューバ>◇17日◇天母 勝てば1次ラウンドで1位通過が決まる日本と、負ければ敗退が決まるキューバ。正直、チームの力量は日本が上だと思っていたが、追い詰められたチームの底力は侮れない。これが一発勝負の怖さでもあるが、日本は「後手後手」の起用になり、苦戦の原因を作ってしまった。 代表チームを預かる監督の一番の難しさは、選手の体調管理だろう。先発で起用する選手はリリーフで起用しづらいし、なるべくならリリーフの連投も避けたいと考える。特に負けても2位以内で予選通過が濃厚な日本にとって「無理をさせたくない」という起用は当然といえば当然の起用法だろう。 それが苦戦の原因だった。5回を投げて63球だった早川に6回のマウンドも任せたが、先頭打者のサントスに四球を与えた。明らかに球が上ずっていて、続くドレイクにタイムリー二塁打。空振り三振で1アウトを取ったが、デスパイネに四球を与えたところで右のサイドハンドの横山にスイッチ。ここまでの継投は仕方なかったと思う。 リリーフした横山は一邪飛で1アウトを取ったあとにタイムリーを打たれ、左の代打を送られた。左のリリーフの準備ができていなかったのかもしれないが、ここが勝負どころ。継投が遅れ、1点差に詰め寄られる手痛い失点になった。 1度後手に回ると、その後も後手に回りやすくなる。横山をリリーフした鈴木昭が6回2死満塁のピンチを切り抜けたが、イニングまたぎで四球、中前安打。やはりリリーフとはいえ、イニングまたぎは難しい。特に国際大会でピンチを切り抜けたあとは、どうしてもホッとしてしまう。1死一、二塁からリリーフした清水も投ゴロを悪送球。同点に追いつかれてしまった。 無理な起用をできない苦しさはある。それでも勝って1位通過を決められる試合なら、先発投手を投げられるように準備も必要。もしものときの準備ができていれば、後手に回らずにすんなり勝てたように思える試合だった。 とはいっても、無敗でスーパーラウンドに進出。実力だけで言えば、明らかに他国をリードしている。今後のスーパーラウンドでは、負けられない試合が続く。負けてもスーパーラウンドに進出できる可能性は高かったと思うが、勝てる試合は確実に勝つことが大事。どこでかで足をすくわれたり、そういう起用が元でチームの勢いがなくなるケースもある。もうひとつ付け加えるなら、代表に選ばれた選手は、いざというときに多少の無理はできる気構えもほしい。日本代表として、日本野球のレベルの高さを見せつけてほしい。(日刊スポーツ評論家)