藤井聡太7冠「結果がふるわず、課題が残った1年だった」今年は未知との遭遇で実力を高める
将棋の藤井聡太7冠(竜王・名人・王位・王座・棋王・王将・棋聖=22)が、今年は未知との遭遇で実力を高める。全8冠保持者として臨んだ24年、叡王戦で同学年の伊藤匠現叡王(22)にタイトルを初めて奪われた。対戦相手からはオリジナルの研究手順をぶつけられた。初めて見る局面で戸惑い、一方的な敗戦も経験するなどライバルの急追を自覚した。これらの経験を生かして少しずつ戦型の幅を広げ、結果を出していく。 ◇ ◇ ◇ 8冠すべて挑戦を受けて立つ側として、昨年初めて藤井はタイトルを失った。「結果がふるわず、課題が残った1年だった」とした。ライバルの足音は徐々に大きく近づいていると感じていた。相手が仕掛けてくる戦法もさまざまで、中には初見の形もあった。 いきなり突きつけられたのは、2月の朝日杯決勝。永瀬拓矢九段(32)が矢倉を採用し、持ち時間40分の将棋で神経を消耗して戸惑った藤井は準優勝に終わった。このほか、渡辺明九段(40)との王位戦7番勝負第2局、佐々木勇気八段(30)との竜王戦7番勝負第4局など、なすすべなく敗れた一戦もあった。 「全体に序盤から戦型が多様化しているなかで、私自身が経験不足だったり、理解不足を感じたことも少なからずあったので、対応力を高めていく必要があると思います」。これが今年の課題でもある。 今年最初の対局は8日の叡王戦本戦トーナメント1回戦。日本将棋連盟101年目、新たな歴史をつづる東京の新将棋会館で8冠復帰を目指す戦いから始まる。相手は2月2日に開幕する、棋王戦5番勝負の挑戦者の増田康宏八段(27)だ。まずは初戦に集中する。 藤井自身、角換わりと相懸かりという2本柱に加え、レパートリーを増やすことを念頭に置いている。「少しずつ戦型の幅を広げていけたら。今まで指していない戦型も試す機会があれば」との思いもある。 タイトル戦は22~24年と同様、王将戦7番勝負からスタートする。こちらは昨年9月の王座戦と同じ、練習仲間の永瀬九段の挑戦を受ける。永瀬との2日制7番勝負は初めてだ。「対局に臨むうえでは立場の違いは関係ない」と話す7冠にとって、力を試すには絶好の機会となる。 現在タイトル獲得通算26期。谷川浩司17世名人(62)の通算27期が見えている。王将と棋王を相前後して防衛すれば、谷川を抜いて、将棋界歴代5位に躍り出る。防衛が続けば、渡辺の通算31期も射程に入る。16年に棋士になって10年目。新たな戦型や対応力も加え、さらにバージョンアップした藤井将棋が見てみたい。 ◆藤井聡太(ふじい・そうた) 2002年(平14)7月19日、愛知県瀬戸市生まれ。杉本昌隆八段門下で、12年にプロ棋士養成機関の奨励会入会。16年、最年少の14歳2カ月でプロ入り。20年の棋聖戦で、最年少記録となる17歳11カ月で初タイトル。23年に初挑戦した王座戦を制して、史上初の8冠全制覇を達成。24年6月に叡王を失い、現在7冠。通算タイトル獲得26期(竜王4、名人2、王位5、叡王3、王座2、棋王2、王将3、棋聖5)。