『南くんが恋人!?』飯沼愛×八木勇征はこの夏No.1カップル! “尊い”が詰まった第1話に
過去に4度ドラマ化され、時代を超えて愛されてきた不朽の名作『南くんの恋人』。その男女逆転バージョンを初映像化した『南くんが恋人!?』(テレビ朝日系)が7月16日より放送開始された。本作は、湘南を舞台に女子高生の堀切ちよみ(飯沼愛)と、手のひらサイズの恋人・南くん(八木勇征)が繰り広げるホーム・ラブコメディーだ。 【写真】小さくなった“手乗り南くん”(八木勇征)の姿 遠距離や年齢差、経済格差など、恋愛ドラマに欠かせない“枷”。本作では、サイズの違いが2人にとっての大きな“枷”となり、そこには様々な危険や困難がつきまとう。そしてそれは、どんなに技術が発展し、昔よりはるかに便利になった現代でも変わらない。けれど、どんなことがあってもこの2人なら乗り越えていけるだろうと確信できる、ちよみと南くんの絆が第1話では描かれた。 特に印象に残ったのは、眩しすぎる2人の恋愛模様。このカップル、清涼飲料水のCMに出てきそうなほどピュアで爽やかなのだ。主演の飯沼はTBSのスター育成プロジェクト「私が女優になる日_」で初代グランプリに輝き、2020年に芸能界入り。日曜劇場『VIVANT』(TBS系)ではベテラン俳優陣とともに出演者の1人に名を連ね、天才ハッカー役をクールに演じた。今回は一転、気候も人も暖かい湘南で健やかに育った明るい女子高生・ちよみを好演している。 だが、そんなちよみも完璧すぎてつい気後れしてしまうのが、彼氏の南くんである。南くんは少し年上の大学生で、家族ぐるみで一緒に育った幼なじみのちよみにとってはずっと憧れのお兄さんだった。だけど、南くんは将来を嘱望されるバスケットボール選手で、地元の大スター。対してバスケ部では万年控え選手で、最後の試合でも思うような結果を得られなかったちよみは南くんの彼女になれて嬉しくも、どこか不安なのだ。 そんなちよみに南くんは、「ちよみは自分がどんなに綺麗で、どんなにかわいくて、どんなにいいやつかを知らないんだよ」と自信を与える言葉をくれる。まさに理想の王子様。だけど、完璧すぎて隙がない……というわけでもない。隙あらばちよみにキスしようとする年相応の男の子らしさもある。特に突然身体が小さくなった南くんが人間に踏まれそうになったり、川に流されたりしながらも、ちよみとの待ち合わせ場所に向かう場面では、その驚きや戸惑いを八木がコミカルに表現し、完璧なだけじゃない南くんのらしさが強調された。 一方で、同時に流れる回想場面では、暗く沈んだ南くんの表情が映し出される。南くんの母親が病気で他界した時のことだ。そんな最も辛い時、待ち合わせ場所の海を望むベンチで何も言わずに寄り添ってくれたのはちよみだった。そんな風にどんな時も支え合って大きくなってきた2人がお互いのもとへ一直線に走っていく様は涙が出そうなくらい尊い。ゆずが手がけた主題歌「伏線回収」もぴったりで、まだ初回の放送だが、すでにこの夏No.1の応援したくなるカップルとなった。 そしてもう一つ、印象的だったのはちよみの家族。家族構成は母の楓(木村佳乃)と父の信太郎(武田真治)、弟の拓真(番家天嵩)、祖母の百合子(加賀まりこ)だ。だが、彼らはいわゆる“ステップファミリー”で、ちよみは信太郎と拓真とは血が繋がっていない。実の父であるたけし(富澤たけし)は生粋のダメ男でその母・百合子は彼と縁を切り、嫁である楓と暮らしていくことを選んだ。そんな堀切家の仲の良さを感じるのが、食卓の場面。そこでちよみはうっかり、南くんと“お城”に行くことを家族に話してしまう。お城……といっても、郊外にありがちで、その見た目から子供がお城と勘違いして親を困らせる、ラブホテルのことだ。それなのに楓も百合子も止めるどころか応援し、信太郎はそれとなく影を消す。良い意味であけすけで、何でも話せる家族関係であることがその会話から伝わってきた。『ファイトソング』(TBS系)や『日曜の夜ぐらいは...』(ABCテレビ・テレビ朝日系)などで、複雑だけどあたたかい家族像を描いてきた岡田惠和らしい脚本といえるだろう。 なお、岡田は1992年にテレビ朝日系で放送された『南くんは恋人』も手がけており、信太郎役の武田は同作で南くんを演じた。当時は学生だった視聴者も今はすっかり大人になり、中には子供を持つ人もいるだろう。そんな人でも当時を懐かしみながら、子供と一緒に楽しめるドラマとなっている。 ちよみが見上げるほど大きかったのに、突然その手のひらに収まるほど小さくなってしまった南くん。個性的で優しい湘南の人たちに囲まれ、2人がこれからどんな困難を乗り越え、さらに絆を深めていくのか楽しみだ。
苫とり子