歌舞伎役者、市川染五郎 挑戦の家系の血を継ぐサラブレッドが生み出すアイディア
高麗屋という染五郎さんの家系は悪役を数多く演じてきた。 「そう言う意味で、悪役を見る機会が小さい頃から多かったというのもあるかもしれません」 同時に高麗屋は、この舞台のような新しいことに果敢に挑戦してきた家としても知られる。その血を継ぐ染五郎さんも、映像や外部の舞台など、さまざまな芝居にどんどん挑戦している。 新たな作品のアイデアもつぎつぎ口をついて出る。例えば、ヒントになったもののひとつが、染五郎さんがお気に入りという、歌川国芳が描いた「相馬の古内裏」という浮世絵だ。 「大きな骸骨が描かれた有名な絵ですが、とても好きな作品なんです。あれを実体化させた新作歌舞伎を作りたいなと思っています。同じように、僕がヒントをもらうのは、ビジュアルが多い。例えば、衣裳のデザインを発端にこういう服を着るキャラクターが登場する歌舞伎を作りたいとか、こういう衣裳ならこういう人物かなとか、よく自分のなかでドラマを作り上げたりしています」 そんなZ世代に、今のエンターテインメント界や歌舞伎界はどんなふうに映っているのだろう。 「世代で区切るのは好きではないですが……」と断って、こう話してくれた。 「個人としてなら考えるところも多いです。例えば、もっと海外の方に目を向けるとか、もっと若い世代に目を向けるとか。僕たちだからできることはもっとあるはずというのは、いつも考えていることですね」 絶対いつか歌舞伎で実現させたい、という作品があれば、おしえてください。 「昔祖父がやっていた世阿弥という舞台があるんです。能を作った世阿弥の話ですけど、普通のストレートプレーの舞台と、ミュージカル版もやって、海外も回ったりしたそうです。その作品を歌舞伎にしてやりたいというのは温めています。それも歌舞伎らしい、華やかな舞台とはちょっと違う。少し抽象的で、ダークな現代演劇っぽい演出でやれればいいなと思っているんですよね」 襲名から6年で苦しかったこともあった。