週2でワンオペのパパ、育児の解像度が高すぎる! 男性育休を通して鍛えた“一人で意思決定する力”とは?
育児休業を経験し、子育てに奮闘しているパパの声を聞いていくインタビュー連載・「男性育休取ったらどうなった?」。今回は子育て家庭に大人気の子どもの写真・動画共有アプリ「家族アルバム みてね」の事業部でエンジニアとして働くパパが登場。9カ月の長期育休を取得し、復帰後は週2のワンオペもこなしているそうで……! 【画像】パパがワンオペの日のタイムスケジュール 今回のパパ 本間匡晃(まさてる)さん/34歳/株式会社MIXI みてねプロダクト開発部 プラットフォームグループ SRE チーム リーダー エンジニア職 ●ご家族 妻:夏美さん/41歳/デザイナー職 長女:沙良ちゃん/4歳 次女:優香ちゃん/1歳6カ月 ※ご本人以外のご家族の名前は仮名です。 ●本間家のパパ育休 2023年2月に次女が誕生。匡晃さんがMIXIに転職して1年となる5月1日から年末までおよそ9カ月間の育児休業を取得した。2024年4月、次女が保育園に入園しパートナーの夏美さんも職場復帰。匡晃さんはほぼリモート勤務で、夏美さんは週2日出社・週3日のリモート勤務をこなす。 ■ MIXIの最終面談で育休取得の意思を伝えた ――匡晃さんは9カ月の育児休業を取得したそうですね。取得に至った経緯を教えてください。 匡晃さん 一人目の育休経験の影響が大きかったですね。もともと育児には積極的に関わりたかったので、一人目の際も育休の取得をしたんです。一人目も二人目も里帰り出産はせず、退院後は夫婦で乗り切りました。というのも、妻の実家は福島。うちの子どもはどちらも冬生まれですが、真冬の福島は雪深くて、どこかに出るにも一苦労なんです。 今回は上の子のケアを含めて一人目よりも大変になることが予想されたので、必ず取得しようと妻の妊娠前から考えていました。実は一人目の育休は以前の勤務先で取得したんです。なので転職活動をして、現在の勤め先であるMIXIの最終面談に至った時も「妻が妊娠したら、育休を取得したいと考えている」と伝えました。 ――入社前から育休を取得する意思を伝えていたんですね! 9カ月という長期の取得になった理由を教えてください。 匡晃さん 里帰りをせず、二人で乗り切ると決めていたので、ある程度の期間が必要でした。一人目も半年と長めに取得していて、長ければ長いほどしっかり育児に関われて子どもの成長も見られると感じたのもあります。もともとは保育園に入園するまで休業したいと考えていて、長くて1年の育児休業を取得するつもりでいました。 当初の予定では下の子がちょうど1歳の2月入園のタイミングで保育園を希望し、落選したら育休を継続する予定でしたが、育児の状況もだいぶ落ち着いていたので、自分の育休は1月末で終えることに。こうして合計9カ月の取得となりました。娘も4月入園が無事に決まり、現在は妻も仕事に復帰しています。 ――育休を取得する際に不安はありましたか? 匡晃さん 収入が減ることについては不安に思っていました。特に長期間の休業なので、どれくらいの金額になるか懸念があったんです。そのため、会社の労務との面談では支払われる給付金の額について細かく確認させてもらい、不安を解消していきました。 ■男性社員の育休も全然珍しくない ――育休に関して上司や同僚の方はどのような反応でしたか? 匡晃さん 先ほど伝えたように上司へは、入社前から「子どもが生まれる際には育休を取得したい」と話していました。妊娠を報告したときは「おめでとうございます」と祝福してもらいましたね。 メンバーへの報告は、そもそも自分が取得経験がないと産休と育休の違いもわからないと思うので、作図ツールを用いて資料を作って説明しました。当時、私は下の子の保育園の合否によって復帰の時期を変更する予定だったので、翌年の2月に保育園に入ることができたらこうで、入れなかったらこうで……とスケジュールを図解して伝えたのです。 同僚からは「もっと取らなくていいんですか?」など、ありがたい声かけもしてもらいましたね。実際の業務に関しては、同じ課題に複数人で取り組んでいたことから引き継ぎ作業はほとんど発生せず、育休に入る前にきりのいいところまで終わらせた感じでした。 ――会社的にも男性が育休を取得しやすい雰囲気だったのでしょうか? 匡晃さん そうですね。私が所属する みてね事業部においては男性でも取得する方が半数ほどいますので、取得して気まずいなどは一切ありませんでした。実際、近いチームのエンジニアで、お子さんが3人いて1年間の育休取得経験のある男性社員もいたんです。 企業としてもオウンドメディアで男性育休のことを記事化していたりもしますし、前例も数多いし、取りやすい企業風土があると感じています。 ありがたいことに休業中もチームの会合に誘ってもらったり、エンジニアの勉強会に参加して顔を合わせたりする機会もありました。復帰後もメンバーの顔ぶれは変わっておらず、スムーズに仕事に戻ることができました。 ■育休取得前の約2カ月は不眠不休で仕事と家事・育児を両立 ――育休中に大変だったことはどんなことですか? 匡晃さん 実は次女の育休中はそんなに大変だったことは思いつかないんです。一人目のときは慣れないこともあって日々を過ごすのに精一杯で、本当に大変だったんですけど、育児に慣れたからか、二人目の育休ではだいぶ余裕がありました。 ただ、産後~育休に入るまでの約2ヶ月が苛烈でしたね。雇用保険の関係で、育児休業給付金を受給するためには今の会社に入社後一年は働いている必要があったので、3月上旬に次女と妻が退院してから私の育休に入る5月までの2カ月間は、フルタイムで仕事をしつつ、家事も育児もしていました。 ――その時期って赤ちゃんは昼夜問わずお世話が必要ですが、深夜の対応もしていたんですか? 匡晃さん はい。妻は上の娘と別室で寝てもらいました。だいたい下の娘が夜中の2~3時に目を覚ますので、それまでは自分も起きていて、ミルクを飲ませたら寝て、また朝起きて仕事しての繰り返しでした。 ――仕事をしながらの深夜対応はかなり辛いですよね。 匡晃さん 睡眠時間が足りなくて、とにかく眠かったですね(苦笑)。時々、有休を挟みつつ、5月には育休に入れる! と思って、頑張っていました。 ■普段は基本リモートワーク。週に2日はパパのワンオペ! ――復帰後の現在はどんなふうに家庭と仕事の両立をしていますか? 匡晃さん 当社はリモートワークとオフィスワークを融合した「マーブルワークスタイル」制度を導入していて、部署ごとの状況に応じて最適な出社回数を選択できるのですが、私が所属する みてね事業部ではリモートワークの割合が高く、私の場合はほとんどリモートです。おかげで通勤時間を育児や家事にあてられて助かっていますし、妻も私もフルタイムで働けているのはリモートのおかげだと思っています。 ――夏美さんは毎日出社ですか? 匡晃さん 妻は週2日出社で、週3日リモートですね。出社の日は私のワンオペです。 ――匡晃さんの方がワンオペになる日が多いんですね! 繁忙期など、夫婦のどちらかに負担が偏る時期はないですか? 匡晃さん あんまりないですね。もちろん、私が週に2日はワンオペなのでそれを偏りと言ってしまうとそうかもしれませんが……。特に気にしていません。不満がまったくないと言えば嘘になるかもしれませんけど、些細なことで揉め事になるのだったら、自分が先にやってしまおうという気持ちが夫婦のどちらにもあると思います。 なので、曜日によるお迎え担当をどちらにするかなどは、妻の復帰前に話をしたものの、それ以外は特に担当を決めているわけではなく、料理も掃除も洗濯も手の空いた方がしている感じです。 ■寝かしつけは妻と順番交代に。お互いに自分時間を確保 ――毎日忙しいと思いますが、現在の1日のスケジュールを教えてください。 匡晃さん 朝はだいたい先にキッチンに立った方が朝ごはんを用意して、もう一人が子どもを保育園に送り出す準備をします。妻が出勤の日は通勤がてら、子どもたちを保育園に送ってくれます。 私はリモートで午前中の業務が終わったら、昼休憩の間に夕食の献立を考え、作っておきます。今、まだ下の子が1歳半で上の子と違うものを食べるということもあり、子どもたちが帰ってイチから夕食を作ると間に合わないので、この時間にほとんどの準備を済ませてしまいます。 夕方はお迎えに行ったら、お風呂に入って、子どもたちとドリルをやったり、テレビを見たり。寝かしつけは私と妻の一日交代にしているので、私が寝かせる日はそのまま21時に一緒に眠ってしまいます。 掃除はだいたいロボット掃除機におまかせですし、洗濯は子どもたちと帰ってきたらすぐに回して、寝かしつけ中に乾燥まで完了。妻が帰宅したら畳んで、しまってくれる感じですね。妻が寝かしつけの日は、私が同じことをします。 ――共働きの子育てで、ロボット掃除機をかけられる床の状態であることが素晴らしいと思います。 匡晃さん いやいや、どんぐりが40個くらい床に散らばっていたこともありますよ(笑)。 ――あはは(笑)! 小さい子どものいる家庭ならではですね! 仕事の残業はあまりないのでしょうか? 匡晃さん そうですね。自分の場合、仕事的にも繁忙期のような時期は特になく、残業もほとんどないので、無理なく両立ができています。残業が少ないのは、自分だけでなく事業部全体に言えることです。 ――先ほど寝かしつけのときはそのまま寝てしまうとお聞きしましたが、そうなるとワンオペの日は、仕事⇒子育て⇒就寝で、いわゆる「自分時間」が持ちづらいと思います。お子さんが生まれてから自分の生活が変わることに対する戸惑いだったり、悪く言うと不満だったりを感じたことはありませんでしたか? 匡晃さん 正直言うと、ありましたね。やっぱり子どもが夜通し寝てくれるぐらいまでは、自分のことって全然できないなぁと思っていました。ただ、1歳くらいになるとなんとか下の子も朝まで寝てくれるようになったし、寝かしつけ担当でない日は夜の時間を好きに使えるので、今はまた自分時間も取れるようになってきました。 ――夫婦の時間はどうですか? 匡晃さん 2人きりの時間は少なくなり、ほとんどありません。ただ、お互いリモートの日は一緒に昼食をとったり、車でごはんを食べに行ったりしていますね。 ■子育ては選択の連続。自分で意思決定できるようになれて良かった! ――今の両立は育休の延長線上にあると思うのですが、育休を取得して良かったことはどんなことですか? 匡晃さん 妻は「(パパの育休のメリットについて)気軽に子育てのことを相談できることがよかった、育休を取ってなかったら細かいことは言いづらかったと思う」と話していましたね。 私自身は、子どもに対してわからないことがないので、何かが起きても自分1人で解決できるようになったことが良かったと思います。育児についてわからないことがあると「妻に聞いてから行動する」必要があったと思いますが、長期の育休でがっつり育児と向き合ったことで、そういった状況を回避することができました。 私自身、子どもが生まれる前は育児=おむつを替えるだとか、ごはんを作るとかだと思っていたんですね。もちろんやらないと死んじゃうので、とても大切なことではあるんですけど、親にとって育児が負担に感じるのは、そういったフィジカルなケアよりも毎日無数の意思決定をこなす必要があることでは? と思うんです。 例えば、子どもがちょっと咳をしているけど、小児科に連れて行くのか、行かずに様子を見るのか。仕事は休むのか休まないのか。こういった状況に夫婦で同じ解像度を持って向き合えず、相手に聞かないと何もわからない・判断できない状況だと、必ず揉め事につながると思います。 ――1人で意思決定ができることは、育児の自信に繋がりますよね。 匡晃さん そうですね。育児の自信と言えば、友人の子どもに接するときにどのようにコミュニケーションすればいいか分かるようになったことも自信になっていると思います。 ――お話を伺っていて、育児に積極的で子どもと接するのが得意なタイプなのかと思っていたのですが、違うんですか? 匡晃さん 全然違いますね。実は子どもは苦手な方だったんです。自分の子が生まれて関わるようになった感じです。 ――そうなんですね。子どもに苦手意識があった男性も、しっかり育児に関わることで、変わることができるということですね。最後にこれから男性育休を取得する予定、または検討中のご夫婦にメッセージをお願いします! 匡晃さん 育休を取ることで貴重な子どもの成長を間近で見ることができ、思い出深い日々を過ごせるかと思います。また、先ほど言ったように乳幼児の頃から子育てに専念する時間を設けることで、子どもの世話についてわからないことが無くなり、妻が不在でも自分1人で解決できるようになることは、今後家族との生活を送る中で重要なポイントになると感じています。大変なことはもちろんたくさんあるかと思いますが、ぜひ男性も育休を取得して、育児を頑張ってくださいね! (取材・文:江原めぐみ、イラスト:ぺぷり)