保守王国・群馬で山本一太知事に自民県議団がブレーキ、副知事人事で「直滑降」が逆効果に
もし提出していたら? 「否決されていたでしょうね」。ある県議は言う。溝の深さを察した知事はブログから〝続投シリーズ〟や感情的表現を消した。代わって自制的な「知事は……『裸の王様』になる危険性がある」「『慢心』や『驕(おご)り』はないか」といったフレーズが増えていく。
6月12日、県議会全会派がそろう全員協議会に出席した知事は謝罪し、宇留賀氏の任期を1年限りに限定した譲歩案を示す。5日後の議会最終日、再任案は本会議で可決された。1年限り、ただちに後任副知事を探す-など4点の確認書を自民、公明など主要4会派と取り交わし、決着した。
■「聞く耳」持ち続けられるか
「大きな騒動となったのは私の責任で、議会への慢心やおごりがあった」。山本知事は何度も謝罪した。
5月24日を境とする知事の急変は自民県議団の覚悟の深さを物語る。二元代表制への理解を、とはいうものの、ある幹部は「仕組み云々ではない。要は知事が耳を貸すかどうか、姿勢の問題だ」と話す。
ブログ名に「直滑降」を使用しているように、山本知事の志向は極めて直線的で、ときに突っ走る。政策スピードも意識して上げようとこだわり、実際、矢継ぎ早の政策発表には目を見張るものがある。ただ、一直線の見解や思いが思わぬ事態を招くこともある。
今回、ブログに自民党県議全員が名指しで登場したが、批判的表現は避けてはいるものの冗談めいた表現に傷ついた県議もいたという。「言霊のミサイル」も穏当とはいえない。
同じブログで6年前の11月、独自の調査結果を公表し、現職知事より自身の方がダブルスコアに近い支持率があるとして、出馬への口火を切ったことへの県議らの反発は、まだくすぶっている。今回の副知事人事が次の知事選への口火ではないかとの疑念も生んだ。
二元代表制とはいえ、知事は議院内閣制の首相と異なり有権者に直接、選ばれた、いわば大統領で権限も強い。直滑降を志向すればスピードは出せる。そこで本当に聞く耳を維持できるのか-。最大与党は今後も注視することになる。(風間正人)