保守王国・群馬で山本一太知事に自民県議団がブレーキ、副知事人事で「直滑降」が逆効果に
発表されたのは今年4月4日の定例会見だったが、県議会、とりわけ自民党執行部はいつ知ったのか。
3月中旬、上京した幹部がある筋から「宇留賀氏が経産省を辞める」との情報を入手した。前年8月に副知事に再任したばかりだ、辞めてどうする? 長野県の実家(農業)を継ぐ-といった不確定な尾ひれもついた。さすがに知事から連絡があるだろうと待ったが、来ない。年度末、ぎりぎりまで待って、何もないので執行部側から確認の連絡を入れると、知事は情報が漏れていたことに驚き、わびた。だが-。
■「そこじゃ、ないんだ」
副知事人事は議会の同意を要する最重要案件だ。なぜ、その情報が知事与党の最大会派へ、打診なり相談なりの形で伝わってこないのか。実は、これが初めてではなかった。重要政策でも事前の相談がなく、発表前後に知るといったことが続いていた。有権者に選ばれた知事と議会が並び立つ自治体の「二元代表制」を知事は分かっていない。
ならば、どうする。自民県議団は執行部を筆頭に、この案件に前向きな意向を一切、示さなかった。
■「自信」から「戸惑い」に
知事は戸惑った。人気の高い自身のブログに、なぜ宇留賀氏が必要か、その能力、実績を何度も書き始める。一方で自民各県議を訪ねて説明し、説得もした。だが、はっきりしない。
宇留賀氏続投を訴えるブログ記事はシリーズ化し、4月6日から5月23日まで56回におよんだ。当初は「時間はある」と説得に自信をのぞかせたが、5月になると「執行部から何ひとつポジティブなコメントがない」と落胆、県議一人ひとりの名前をあげ、同意するよう呼びかけた。
事態は動かず、とうとう「自民党県議に何の恨みもないが、やらざるを得ないと思えばブログのメッセージは言霊のミサイルに変わる。一切、逡巡(しゅんじゅん)しない」と対決姿勢まで匂わせた。むろん、逆効果だった。
■県議会で謝罪
5月24日、県議会第2回定例会初日。この日で交代する議長、副議長が早朝、知事応接室を訪ね、「混乱を招く」と、この日の再任人事案の提出を避けるよう進言し、知事は従った。