保守王国・群馬で山本一太知事に自民県議団がブレーキ、副知事人事で「直滑降」が逆効果に
群馬県の副知事人事をめぐる山本一太知事と県議会自民党との3カ月に及ぶ確執は、議会最終日の6月17日、「1年限りの続投」という妥協案で決着した。知事側のペースで進むかと見られた再任案は〝蚊帳の外〟に置かれた自民執行部などの反発で膠着(こうちゃく)し、戸惑った知事が自身のブログに<反論・反発・悲憤>を次々と吐露、読者を巻き込んだ騒動へと発展した。背景には選挙で選ばれた首長と議会の「二元代表制」という自治体特有の制度への考え方の温度差もあった。 【写真】本会議後、任期を1年限りとするなどの確認書に山本知事とともに署名する自民、公明など主要4会派幹部 ■成果重ね、突っ走る 昨夏、再選を果たした山本県政の5年は、うち3年をコロナ対応に追われながらも成果を挙げつつある。 今年4月、半導体の世界的企業「信越化学工業」が伊勢崎市に4番目の拠点となる新工場建設を発表したほか、昨年夏にはタイヤ製造大手「日本ミシュランタイヤ」が東京都から太田市に本社移転するなど、有力企業の移転が相次ぐ。 県北部の豊富な県営水力発電所のグリーン電力を事業者向けに販売する地産地消型モデルの新設、旧陸軍・堤ケ岡飛行場跡地(高崎市)にIT拠点を集積させるといった先進的構想は企業ばかりか一般の関心も引き、昨年の移住希望先ランキングで群馬県は過去最高の全国2位に躍進した。 矢継ぎ早の成果は県民の支持を集め、自民県議団にしても異論はなかった。 突っ走る知事に寄り添うように副知事として伴走し、省庁はじめ中央との人脈を駆使し補佐してきたのが今回の人事案件の主役、経済産業省出身の宇留賀敬一氏(43)だった。 その貢献度から山本知事も当然、再任されるものと思い、沈黙を続ける自民執行部に向け自身のブログで再三、「代えがたい人材」と強調し訴えた。しかし、執行部が問題にしたのは、そこではなかった。 ■事前相談なく、募る不信 1期目の令和元年8月、当時の現職副知事では全国最年少の38歳で副知事となった宇留賀氏は2期目の昨年8月も再任された。ただ省庁から出向で就任した副知事は2年前後で戻るケースが多く、5年目となる宇留賀氏は異例といえた。 経産省も気にし始め、後任探しをしたものの難航する中、宇留賀氏本人が経産省を辞し副知事に専念する意向を知事に漏らし、話は動く。だが秘せられた。