割られた窓に希望の絵 昇降口、投石で損壊続き… 郡山商高(福島県郡山市) 生徒有志、校内和ます
昇降口の窓ガラスが割られる被害に見舞われた郡山商高(福島県郡山市)の生徒有志は16日、破損部を覆う板を絵画で彩った「壁アート」を取り付けた。心ない行為に胸を痛め、校内の雰囲気を和ませようと生徒会役員ら15人が制作。虹や部活動に励む生徒の姿をカラフルに描いた。「悲しい出来事をポジティブに変え、生徒や来校者に明るい気持ちになってほしい」との願いが込められている。 「写真撮ろうよ」「すごい絵だね」。絵画がお披露目された16日夕の下校時間、昇降口には足を止め、色鮮やかな虹が印象的な作品を眺める生徒たちの姿があった。これまで無機質な板に覆われていた昇降口に弾んだ声がこだました。 ガラスの破損は今春に起きた。投石でガラスが割れる被害が相次ぎ、郡山署に被害届を提出した。現在も昇降口は利用できず、生徒は出入り業者らが出入りする場所などからの登校を余儀なくされている。 板でふさがれた昇降口には光が入らず、雰囲気も重くなった。「昇降口を絵で明るくし、一生懸命頑張る生徒がたくさんいる高校だと知ってもらおう」。25日の中学生向け体験入学会を前に桑田粒哉教諭(40)が壁アートを発案した。5日に生徒会や文化祭実行委員に呼びかけると、2、3年生5人が手を挙げた。
5人に呼応する仲間は徐々に増え、8日から放課後に生物室に集まってデザインを練った。生徒会副会長の鈴木結愛(ゆめ)さん(3年)=流通経済科=がリーダーとなり、明るいメッセージが伝わる内容とする方向性が定まった。 キャンバスとなるベニヤ板は桑田教諭の高校の先輩が勤める工務店「大樹ホーム」(会津若松市)が活動に賛同して無償で提供してくれた。縦2・5メートル、横6メートルの板の中央には明るい印象を持たせようと、大きな虹を配置。部活動に励む生徒の姿、流通経済、会計、情報処理の各科を象徴するイラストもあしらった。「夢へのSTEP」という文言には一人一人が目標に向かって努力を重ねる学びやというメッセージを込めた。 郡山署は破損に関わったとみられる人物から任意で事情を聴いている。ガラスは夏休み期間中に修繕される予定で、アートは修繕後は敷地内に飾られる予定という。山内浩校長(56)は「前向きに活動に励む、本校の生徒らしい姿勢が絵から伝わる」と誇らしげに語る。
副リーダーの鈴木華恵さん(3年)=情報処理科=は「嫌な気持ちだった」と破損が起きた当時の悲しみを打ち明け、見た人に笑顔になってもらいたいという一念で作業したと振り返る。「体験入学に来てくれる中学生に、『郡商(ぐんしょう)っていいな』と思ってほしい」と願っている。