【山手線「駅名」ストーリー】池袋(JY13): ホテルメトロポリタンのあたりは農業用水の水源「丸池」だった
「池袋地名ゆかりの池」の碑石
さて、池袋の名所だが、明治初期まで農村だったせいか、これといって目立つものはない。あえて挙げれば、前出の(2)の説を現代に伝え残す場所がある。 池袋西口のホテルメトロポリタン近くに、元池袋史跡公園がある。もともとは「元池袋公園」という名だったが、周辺の再開発に伴う下水道工事のため廃止された。それに伴い、わずかに残っていた丸池も埋め立てられ、完全に姿を消した。 そこで1998(平成10)年、場所を移して元池袋史跡公園が開園し、「池袋地名ゆかりの池」の碑石を立て、丸池がここにあったことを残したのである。 江戸・明治時代の遺物がほとんどない池袋にあって、貴重な史跡といえよう。
【池袋駅データ】
・開業 / 1906(明治36)年4月1日 ・1日の平均乗車人員 / 45万8791人(30駅中第2位 / 2022年度・JR東日本調べ) ・乗り入れている路線 / 東京メトロ丸の内・有楽町・副都心線、西武池袋線、東武東上線、またJRでは山手線の他に埼京線・湘南新宿ラインの停車駅
【参考文献】
・『駅名で読む江戸・東京』大石学 / PHP新書 ・『東京の地理と地名がわかる事典』浅井建爾 / 日本実業出版社 ・『江戸・東京 地名の由来を歩く』谷川彰英 / ベスト新書 ・『地形を感じる駅名の秘密 東京周辺』内田宗治 / 実業之日本社
【Profile】
小林 明 1964年、東京都生まれ。スイングジャーナル社、KKベストセラーズなど出版社での編集者を経て、2011年に独立。現在は編集プロダクション、株式会社ディラナダチ代表として、旅行・歴史関連の雑誌や冊子編集、原稿執筆を担当中。主な担当刊行物に廣済堂ベストムックシリーズ(廣済堂出版)、サライ・ムック『サライの江戸』(小学館)、『歴史人』(ABCアーク)、『歴史道』(朝日新聞出版)など。