袋井ネイルサロン放火 女性の無罪確定 地検浜松支部「覆すのは困難」
袋井市で2018年3月、当時勤務していたネイルサロンに2回放火したとして現住建造物等放火と非現住建造物等放火の罪に問われた富士市の女性(29)に無罪を言い渡した静岡地裁浜松支部(来司直美裁判長)の判決が7日、確定した。静岡地検浜松支部が期限の6日までに控訴しなかった。同地検は「事実認定について判決内容を検討した結果、控訴審で覆すのは困難と判断した」とコメントした。 裁判員裁判で審理した。判決は「検察の主張を総合的に考慮しても、被告が放火したと合理的疑いなく認定するのは不可能」との判断を示した。求刑は懲役8年だった。 来司裁判長は従業員らの証言の一部について信用性を認めず、ほかにも実行可能な従業員が存在すると指摘した。被告以外のサロン関係者に放火した具体的な形跡や動機がないとした検察側の主張に対して、裁判長が「被告についても具体的な証拠はない。検察官が都合よく事実を評価している」「ほかの従業員らに関して十分な捜査がされた形跡もない」と、捜査機関側の立証や捜査方針に言及する場面もあった。 女性は18年3月13日に袋井市の店舗スタッフルームで、同26日には移転先の同市の店舗事務室でそれぞれ火を放ち、建物計2棟の一部を焼損させたとして起訴されていた。 ■拘束1年2カ月、取り調べは180時間 現住建造物等放火罪などに問われ、7日に無罪が確定した女性(29)は弁護人を通じて「本当にやっていないので、安心しています」とコメントした。弁護人によると、女性は逮捕から保釈まで1年2カ月間にわたり身体拘束され、警察と検察の取り調べは計約180時間に及んだという。 事件は2018年3月に発生し、女性は23年1月に逮捕された。弁護人によると複数回の保釈申請をするも、認められたのは24年3月だった。女性は公判の最終意見陳述で「取り調べでどう話しても犯人だというふうに持っていかれ、脅しの言葉もあった。保釈後も以前のような生活は送れていない」と述べた。弁護人も、長い取り調べと勾留の中で「〝自白〟してしまっていたら冤罪(えんざい)を生む危険性があった」と弁論していた。 弁護人は無罪確定を受け「捜査担当の検察官は、本人の弁解を誠実に聞き取る姿勢に欠けていた」と苦言を呈した上で、「判決を教訓に、適正な刑事手続きをするように努めてほしい」と求めた。
静岡新聞社