総選挙大敗の尹錫悦政権を見ていると、韓国社会が「朴槿恵大統領弾劾」当時に回帰しているような気がしてならない
与党大敗の原因は何だったのか
衝撃の4.10総選挙の敗北後、大統領の支持率が23%まで落ち込むなど、国民からの「心理的弾劾」水準にまで追い込まれた韓国の尹錫悦政権。韓国では早くも残り3年の任期を無事に果たせるかどうかについて懸念の声まで上がっている。 【写真】「旅行は日本、買物は中国から」…止まらない「物価高騰」への韓国国民の不満 まさかの大惨敗後、韓国の保守紙は与党惨敗の責任をひたすら尹錫悦大統領に転嫁した。最も積極的に尹政権を支援してきた『文化日報』も社説を通じて、「(国政運営から)野党を排除し記者会見もしないなどの極端な不通に対して中道性向の国民が背を向けた」と指摘した。 同紙は、「ここに金健希夫人のディオールバッグ問題に対する大統領室の対応は与党支持層さえ首を横に振らせ、(選挙運動)終盤になると、李鍾燮・黃相武・ネギ騒動が重なった」とし、選挙運動中盤以後、大統領室を中心に与党側に悪材料が押し寄せたのが今回の敗北の原因だと分析した。 確かに、文化日報の指摘とおり、金健希夫人のディオールバッグ事件や、 李鍾燮(イ・ジョンソプ)元国務長官問題、 黃相武(ファン・サンム)大統領室主席秘書官問題、ネギ騒動は、今回の総選挙の転換点になった事件として挙げられる。 李鍾燮(イ・ジョンソプ)元国防部長官は、公捜処(高級公職者犯罪捜査処)の捜査対象となったにもかかわらず、3月に新任のオーストラリア大使に任命されて韓国を離れたことが問題となった。 2023年の豪雨で被害を受けた慶尚北道醴泉郡の近くで民間人の捜索作業に動員されて死亡した海兵隊員事件と関連し、公捜処(高級公職者犯罪捜査処)は当時の国防長官の李氏を捜査対象に入れて出国禁止を命じた。しかし、尹大統領は、総選挙前に彼をオーストラリア大使に任命することで問題を自ら招いたのだった。 一人の兵士の死に対して国防長官にまで責任を負わせることには無理があるとしても、青年の悲劇の前に国家があたかも責任を回避するような姿勢を見せたことが、若い男性層を中心に怒りを呼び起こした。 黃相武(ファン・サンム)大統領室主席秘書官問題とは、大統領室の舌禍騒動のことだ。 大統領室の黄相武市民社会首席は3月中旬、記者団との食事の席で、尹錫悦政権と対立しているMBC放送局の記者に対し、「1988年、(政権に批判的な)経済新聞記者が太ももを刺された事件があった」とし、脅迫のようにも聞こえる不適切な発言をした。 彼の発言が伝えられると、記者団体をはじめとするメディア関連団体は黄首席の即時辞任を要求したが、大統領室は事件後1週間も沈黙し、問題を大きくした。尹政権になってから、進歩メディアと政権間の対立が深刻な中、この騒動によって多くの韓国国民は尹錫悦政権が報道の自由を侵害していると感じさせられたのだろう。 ネギ騒動とは、尹大統領が民生点検のイベントで訪れたスーパーで、長ネギ1束に「875ウォン」と書かれた値札を見て、「合理的な価格だ」と発言したことが問題となった。実は、当時の市中で長ネギ1束の値段は4000~5000ウォン程度だったが、大統領の訪問に備えてスーパー側が875ウォンの値札をつけたと推測できる。 この一件は数日間テレビニュースのトップを飾り、リンゴ1個5000ウォン、キャベツ1個5000ウォンという殺人的な物価高騰に庶民の憂いが深まる中、大統領が物価を知らなすぎるという非難が沸き起こり、尹大統領に向かって「裸の王様」という嘲弄が殺到した。 選挙期間の序盤には共に民主党が資格未達の候補者を李在明(イ・ジェミョン)代表の側近という理由だけで大挙公認したことで、野党側に世論とメディアの非難が集中していたが、大統領室が立て続けにドジを踏んでしまったせいで、世論が急変したわけだ。 代表的な保守紙の『朝鮮日報』は社説を通じて、「総選挙で尹大統領は国民から審判を受けた」とし「尹大統領はこのような四面楚歌の状況でどのように国政をしていくのか問わざるを得ない」と嘆いた。