「命」の授業が注目 ゴルゴ松本を言葉で導いた石橋貴明
文字に込められたメッセージを、独自の解釈を交えながら解説する“命の授業”が注目を集めているお笑いコンビ「TIM」のゴルゴ松本さん(48)。「日本語の五十音は“愛(あい)”から始まって“恩(をん)”でおわる」「“吐”くという字は口に±(プラスマイナス)と書きます。愚痴などマイナスのことを口にしなくなると、マイナスがなくなって夢が“叶”うんです」。著書「あっ!命の授業」(発売中)も出版し、まさに“文字の伝道師”ともなっていますが、人生の岐路で、自らを言葉の力で導いてくれた恩人が「とんねるず」の石橋貴明さんだと言います。
芸能界を目指すきっかけをもらい、実際にお会いしてからは、今にいたるまで、人生のターニングポイントとなる言葉をプレゼントしてくれる。それが石橋貴明さんなんです。 僕の高校時代、ちょうど「とんねるず」さんがテレビでドーンと出てこられた時期だったんです。それまでは師匠に弟子入りしてお笑いの世界に入るのが一般的だったのに、師匠を持たず、学校の人気者がいきなりスターになった。その流れも鮮烈でしたし、特にタカさんは学校は違うものの、自分と同じ野球をやってらっしゃったということもあって、すごく特別な感じで見ていたんです。おこがましいですけど、何か自分と共鳴する部分があるというか。 高校を卒業して、最初は相方のレッド吉田ともども役者を目指していたので、そこからお笑いを始めたのは僕が27歳、レッドが29歳。高校を卒業して18歳とか19歳で始める人が多い中、かなり遅いスタートだったんです。 周りは自分たちよりずっと年下の先輩ばかり。なかなか先も見えない中、1~2年くらい経った時にフジテレビの番組の前説をやらせてもらえるようになったんです。元巨人の定岡正二さんの番組だったんですけど、そこで定岡さんから草野球に誘ってもらいまして。ありがたい話、僕もレッドも、元高校球児で甲子園に出ているということもあって。 草野球があったのが神宮外苑の野球場。朝からそこで準備をしていると、フラフラと背の高い、いかり肩の人が歩いてきたんです。それが、タカさんとの出会いでした。定岡さんに誘われてタカさんも来られたんですけど、その頃はもう仕事がメチャメチャ忙しくなってて、当時32、33歳だったはずなんですけど、もう完全にスターでした。 テレビで見ていたあこがれの人がいきなり目の前に来たので、そりゃ、もう、大緊張ですよ!!「あんまりジロジロ見ちゃいけない…」と思ったことは覚えてるんですけど、あまりにも緊張していたからか、その日の試合は勝ったのか、負けたのかすら、覚えてないんですよね。 そして、試合の後、定岡さんに声をかけていただいて、定岡さん、タカさん、僕とレッドで近くの喫茶店でお茶をしたんです。そりゃね、説明するまでもないですけど、さらにガッチガチです(笑)。 「野球やってたんだ!?」「えっ、甲子園出てるんだ!!いいよね。オレは帝京で1学年上と1学年下は出たんだけど、オレたちの学年は出られなかったんだよね」とか、気を使っていろいろ話しかけてくださるんですけど、こちらは返事しかできない。 そして、さんざんタカさんが野球の話をしてくれて、そして、こちらはさんざん返事だけ(笑)した後に、まだ海のものとも山のものともつかない僕らに言ってくれたんです。「芸能界、一発逆転あるから。最後まであきらめないで頑張れよ」と。 お笑いを始めたのが普通の流れから考えると10年ほど遅い。その時点でかなりのビハインドを背負っているわけです。「本当に、この道で合ってるんだろうか」。「いつか日の目を見る日はくるのか」。言いようのない不安や迷いが渦巻く中でもらったのがその言葉だったんです。 “一発逆転”。もちろん、普通の生活の中でも使う言葉なんですけど、これって特に野球部でよく使う言葉なんですよね。「9回裏、ツーアウトでも一発逆転あるぞ」と。普通に「頑張れよ」と言ってくださっても、当然うれしかったと思うんですけど、僕もレッドもやっぱり野球部なんですよね。自分たちと同じ野球部出身のタカさんがその言葉を選んでエールをくださったことで、より一層、ガツンと響いたんです。燃えました。一気にスイッチが入りました。