「人間関係が長続きしないのはなぜ?」コミュ障が陥りがちな“落とし穴”
「遠慮」の壁を取り外そう
「○○しない?」と声をかけられない原因の第一は、他人への「遠慮」です。 「こんなことを言うと、ほかの人に迷惑なんじゃないか」 「相手に図々しく踏み込み過ぎではないだろうか」 「こんな提案をして、自分の感覚がへんだと思われてしまわないか」 など、いろいろなことを考えすぎて、身動きがとれずにすくみ合ってしまう。 このような状態に陥ったグループは、人間関係を何も変化させられないまま終わります。それなのに、授業後のアンケートには「友だちになりたかった」と書いてくるのです。 彼らは人が嫌いとか、一人がいいとか思っているわけではなく、友だちはほしいのです。 そこで私は次の授業で「もう一回やってみてください。できなかったら、できるまでやります」と指示しました。すると次はすべてのグループが、何らかの行動をとってきました。 彼らの行動が変わったのは、私が「できるまでやります」と強い言葉をかけて、彼らの「遠慮の壁」を取り払ったからです。学生たちは「できるまでやらなくてはいけない。だから、遠慮しなくてもいいんだ」と受け止め、行動を変えたのです。 私は、学生時代に仲良くなった友だちは、その後何十年にもわたって付き合う関係になることを、長い経験で知っています。それなのに新入生が4人いて、それぞれ仲良くなったほうがいいと思っていながらも、遠慮し合って何もできないなんて、もったいないことだと思います。 忙しくて時間が合わないなら、空いている時間にLINEで参加するとか、やり方はいくらでもありますね。 「遠慮することで新しく人間関係をつくるチャンスを失ってしまって、本当にいいの?」と言いたいのです。 そして、人間関係が長続きしない人と、“次の機会”に上手につなげられる人では「雑談」一つとっても、大きな違いがあります。 その違いについては、また次回。
〈著者プロフィール〉齋藤 孝(さいとう・たかし)
1960年静岡生まれ。明治大学文学部教授。東京大学法学部卒。同大学院教育学研究科博士課程を経て現職。『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』(毎日出版文化賞特別賞、2002年新語・流行語大賞ベスト10、草思社)がシリーズ260万部のベストセラーになり日本語ブームをつくった。著書に『いつも「話が浅い」人、なぜか「話が深い」人』(詩想社)、『大人の語彙力ノート』(SBクリエイティブ)、『話がうまい人の頭の中』(リベラル新書)等多数。著者累計発行部数は、1000万部を超える。テレビ出演多数。
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