【インバウンド観光】体験型誘客に期待(12月12日)
須賀川商工会議所のインバウンド体験型観光推進協議会は、個人や家族など少人数の訪日客の受け入れを充実させるため、地元ならではの体験型観光商品づくりに取り組んでいる。地域に根差したツアーに仕上げ、オンラインで販売する方針で、新たな地域活性化策として注目したい。 福島空港と台湾を結ぶ定期チャーター便が今年1月に就航した中、団体客の主な観光先は会津方面が中心となっている。空港が立地する須賀川市をはじめ、周辺地域には来訪者が少ないのが現状だ。協議会は今年9月に発足し、伝統工芸を手がける企業や旅行代理店、まちづくり組織など7団体・事業所が加盟する。いかに市内や地域に滞在してもらう計画を打ち出せるかが課題として浮上している。 須賀川商工会議所は、近年の訪日客の旅行形態が観光地巡りから、体験や経験を重視している点に着目し、地元の観光資源を生かした台湾からのツアー商品開発を進めている。市内の企業では、鍾馗[しょうき]様などの絵のぼりの絵付け、手拭いの藍染め、畳を使った工芸品作りなど日本の伝統文化を体験できる。このほか、秋祭りでの神輿[みこし]担ぎ、日本を代表する火祭りとして名高い「松明[たいまつ]あかし」への参加など、外国人にとって魅力的な素材は少なくない。
これらの素材を結び付け、海外旅行者にオンラインでツアーを売り込む独自の仕組みを年明けにも構築する。台湾を来年2月に訪れ、現地の旅行代理店などにもPRする方針だが、SNSやインフルエンサーなどを活用した周知も求められるだろう。 誘客を進めるには選択肢を増やす必要もある。ツアーの付加価値として市内の「須賀川特撮アーカイブセンター」を生かさない手はない。ミニチュアなどを使った撮影を体験できる国内唯一の施設で、新型コロナ禍を経て海外からの来訪者も増え始めている。ネット空間などで話題が広がれば、世界に通じるツアーになり得る。 長期滞在客を呼び込むには、周辺地域との連携も欠かせない。近隣の天栄村では台湾のツアー客に人気の雪遊びを楽しめる。果物収穫などの農業体験も各地で可能だ。協議会は広域的なインバウンド観光の核としての役割を発揮してほしい。(安島剛彦)