シリアでロシア、イランの地位後退 露軍車列をあおる地元民 バランス変化、米欧の関与も
しかし、アサド政権が崩壊したことで、両国は戦略的な後退を余儀なくされている。
ロシアは、中東の最重要拠点であるヘメイミームやタルトゥースの扱いを、シリアで今後発足する新政権と協議する必要に迫られている。イランは宿敵と位置付けるイスラエルに対抗するために「抵抗の枢軸」と呼ぶ勢力圏の確立を目指してきたが、その一翼であるシリアを失い、より直接的にイスラエルと対峙せざるを得なくなった。
イスラエルはアサド政権崩壊後の1週間ほどで主に軍事施設を対象にシリア国内で470回以上の空爆を行ったとされる。これらの標的には政権軍が保有していたレーダーシステムなどが含まれ、イランにとってはイスラエルからの攻撃を早期に察知するのがいっそう難しくなったとの見方が強い。
■民主主義諸国との関係構築に期待
そんな中でシリアの首都ダマスカスを訪問した米国のリーフ国務次官補らは20日、暫定政府を主導するHTSのジャウラニ指導者と会談し、シリアへの復興支援を協議。HTSのテロ組織指定解除にも前向きな姿勢を示したと報じられる。
HTSなど旧反体制派にはアサド政権軍に協力してきたロシアとイランへの反感が強く、長期の内戦で疲弊した国民には米欧など民主主義諸国との関係構築に期待する声が大きい。中東情勢への関与に消極的とされるトランプ次期米政権の出方は不透明ながら、米欧がシリアを取り込むことは露・イランなどの強権主義勢力に打ち込むくさびともなりそうだ。
(シリア西部タルトゥース 大内清)