BYDシール 詳細データテスト 低速の快適性は要改善 高速域の長距離移動は快適 ハンドリング良好
走り ★★★★★★★★☆☆
2モーターのシールは、にわかには信じがたい530psで0-100km/hが3.8秒というハイスペックだが、1モーターの後輪駆動版でも312psと十分に力強い。1モーターの競合モデルの中で、これを上回るものはない。寒く路面が湿ったテストコースで、後輪駆動のシールは公称0-100km/hタイムの5.9秒にコンマ2秒届かなかった。 ファミリーカーBEVにとって、これが瞬発力不足なのかどうかは甚だ疑問だ。とはいえ、パワーで劣るテスラ・モデル3の後輪駆動版が、スペック表により早いタイムを記しているのは、重量差によるものだろう。その後、190km/hのリミッターに至る加速は、スマートに続いていく。 公道では、常に気持ちいい活発な走りを見せる。バッテリー残量が30%以下になると、あからさまにパワーダウンするが、それでも、もともと312psあるのが大きい。 スロットルレスポンスには、意図的な味付けがされている。どの走行モードでも、床までペダルを踏み込んでみても、パワーは徐々に出るようなセッティングだ。すべての操作に対して遅れがあるスマート#1ほどひどくはないが、直観的なドライビングを損ねてはいる。エコモードでパワーが絞られるというのは理解できるのだが。 回生ブレーキのモードはふたつ。スタンダードはなかなか減速しないが、より強い方でも効きはマイルドで、ワンペダル運転できるほどではない。最新BEVとしては、もう少し調整幅の広さがほしいところだ。113km/hからの静止が51.4mというのは長めだが、コースの今比ションの割には良好。ブレーキペダルは軽くてトラベルが長く、自信をもたらしてくれるほどではない。
使い勝手 ★★★★★☆☆☆☆☆
■インフォテインメント 対角線で15.6インチと巨大なディスプレイで、しかも回転機構が備わるというのはアイキャッチだ。またカーソルをクリックしたりスワイプしたりすれば、画面の解像度とレスポンスがすばらしいことに気づくだろう。 とはいえ、このインターフェースを使いはじめてみると、とくに走行中に、構造の複雑さと、有効に使える面積の小ささに、苛立たずにはいられなくなる。結果として、頻繁に使う機能が、メニューの深い階層に埋もれてしまうのだ。 ナビゲーションシステムはわかりやすいが、渋滞回避性能は低い。Apple CarPlayとAndroid Autoに対応するが、どちらもワイヤレス接続ができない。CarPlayは車載機能に組み込まれるのではなく、そのすべてを支配的に操作でき、画面回転機能のキャンセル操作も可能だ。 分割表示はできるが、車載ナビとSpotifyのハーフ&ハーフのみだ オーディオはダイナウディオ製。フォルクスワーゲン・トゥアレグのオプションに選ばれたこともある、デンマークの名門だ。実際、シール用システムは温かみとクリアさのある、じつに心地いいオーディオだった。 ■燈火類 スペック表ではアダプティブLEDヘッドライト搭載となっているが、その実体は自動ハイビームであり、もっと複雑な機能の、いわゆるマトリクスLEDではない。 ■ステアリングとペダル ペダルもステアリングホイールも、きわめて一般的な配置。アジャスト量は十分にある。