速球派投手が低め狙うと「球速が落ちる」理由 力のロスを防ぐ“柔軟性”と“尻の位置”
日米球界を熟知する専門家2人が投動作の「正しい下半身の使い方」を伝授
下半身を正しく使うことができれば、投球の質は上がっていく――。野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」が19日、投げ方に悩む少年野球の選手、指導者たちに向けた5夜連続のオンラインイベント「投球指導week」を開催。制球力をテーマに、向上に必要なドリル、エクササイズが紹介された。 【実際の動画】制球力を上げたい球児は必見! 股関節、胸郭の柔軟性を上げるストレッチドリル イベント4日目第1部に登場したのは、愛知県名古屋市で球速アップに特化した米国式野球アカデミー「Be an Elite」を運営する松本憲明さん。現役時代はトミー・ジョン手術(肘内側側副靱帯再建術)を経験し、米国での指導を受け最速151キロをマークし復活を果たした。日本と米国の指導の違いについて「向こうでは理論的に教えてくれ、選手が積極的に指導者に話を聞きに行く環境がありました」と振り返る。 下半身が使えていない投手の特徴として、膝が爪先方向に抜けることで、お尻が下がって体幹が丸まり、インステップしてしまうことがあるという。理想的な下半身の使い方として「まずはヒップヒンジの形を作り、軸足に(重心が)乗ることが大前提」と説明。ヒップヒンジとは、お尻を後ろに突き出しながら股関節を蝶番(ヒンジ)のように折り畳む動作のことで、「お尻が後ろに引けた体勢をキープしながら、捕手方向に体重移動することが大切です」と語った。 そこで松本さんは下半身、股関節を効率よく使うドリルを紹介。野球ボールを軸足側の股関節に挟み、体勢をキープする。注意点は上半身が前に倒れすぎないことと、背筋を伸ばし体幹を使うイメージを持つことだ。筋力が整っていない小学生などは、両膝を地面につけた状態から始めるのもよいという。
オリックス、ナショナルズで指導…高島誠氏は下半身の柔軟性を力説
第2部にはオリックスやMLBのナショナルズでもトレーナー経験を持つ高島誠さんが登場。指先での制球は難しく、「高めのボールは良いが、低めになるとガクッとスピードが落ちる子はよく見ます」と指摘する。指先でコントロールしようとすると、ボールに「パチっ」とかかる感覚はかえって得られず、変化球も緩くなってしまうという。 制球力向上に大切なのは、末端の指先ではなく下半身、股関節周りの柔軟性だという高島さん。「低めに投げるときは、(回転動作の際に)右の骨盤がいかに前に出てくるかが重要。骨盤が回り切らないから、指先でコントロールしようとしてしまう」といい、改善のための骨盤周りのストレッチドリルを紹介。右投げの場合、座りながら左足はあぐらをかくように膝を90度に曲げ、右足は後ろへ真っすぐに伸ばす。ここで、骨盤が後ろに逃げず、真っすぐにすることが大切だという。 この体勢をキープできるようになれば、そのままボールを持ち、トップを作った状態からスローイングを行う。筋力が強くても柔軟性がなければ、ボールに力を伝えることは難しい。低めの制球力を養うには、より下半身の柔軟性が必要になる。 今回のイベントでは、効果的なエクササイズや投球動作を改善する具体的な練習法を松本さん、高島さんが身振り手振りで紹介。視聴者も大満足の1日となった。選手や指導者の“投げ方の悩み”を解決する「投球指導week」は20日まで開催される。
First-Pitch編集部