無農薬野菜と魚を同じ農場で生産!? 持続可能な農業として注目される「アクアポニックス」とは?
IT企業スーパーアプリの技術を農業に
アクポニが事業支援に関わったなかで最大規模のアクアポニックス農場が、「マナの菜園」(岐阜県加茂郡)。約2800㎡は日本最大級だ。2022年に稼動している。事業者はIT企業のスーパーアプリ。ゲームやシステム開発の技術が、アクアポニックスの稼動システムに活かされている。 現在、リーフレタス、ロメインレタス、バジルなどの葉物を月5000~6000株ほど出荷している。アクアポニックスのアドバンテージについて、菜園の立ち上げから関わってきた石川敬峰さんは「栽培期間は夏なら1ヶ月、冬でも2ヶ月ほどで収穫できます」と安定性を挙げる。 野菜の特長は、なんといっても無農薬、無化学肥料の事実上オーガニックであることだ。ただ、農林水産省の有機農産物の認証制度では水耕栽培の野菜が適用外になっている。そのため商品に有機JASマークをつけることができず、「有機野菜」をアピールできない歯がゆい現状がある。 「そのため野菜のパッケージに魚のイラストを入れてアクアポニックス産の野菜であることをアピールしているんです」 アクアポニックスの名は、まだ一般的に認知されているわけではない。エコでサスティナブルな循環型農業をアピールしたいところだが、その説明は少々長くなるのは否めず、売り場のPOPに最小限の説明を表示している。このパッケージのイラストから消費者には「“魚の野菜”と呼ばれています」(前出の石川さん)。 野菜栽培のほうは着々と収穫量を伸ばし、販売量も伸びている。産直野菜を扱う店舗に卸すほか、通販サイト「食べ直」のリピーターを獲得している。有機認証マークはついていないが、「単純に味が気に入ってリピートされている方が多いように思います」と石川さんは手応えをつかんでいる。 実際、土壌栽培の野菜と比べるとカリウム含有量が少なく、エグ味が少ないのがアクアポニックス産野菜の特徴とされる。 水槽ではチョウザメ、マス、ティアラピアなどの淡水魚を養殖している。魚たちはまだ製品化されていないが、チョウザメの採卵が始まったところで、将来的にキャビア製品が販売される見通しだ。