チェロの人気とレパートリーを広げた稀代の名手、ロストロポーヴィチの魅力【クラシック今日は何の日?】
クラシックソムリエが語る「名曲物語365」
難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。
ショスタコーヴィチ『チェロ協奏曲第1番』 20世紀のチェロ界を牽引したスターの初演作
今日3月27日は、20世紀を代表するチェリスト、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(1927~2007)の誕生日です。 旧ソ連のアゼルバイジャンに生まれたロストロポーヴィチは、圧倒的な技巧と豊かな音量、そしてスケールの大きな表現力によって、20世紀後半の音楽界を席巻。その腕前に魅了された同時代の作曲家たちが競ってロストロポーヴィチのために作曲したことは、まさにスーパースターの証明といえそうです。 彼に捧げられた現代作品は170曲以上。代表的なところでは、ショスタコーヴィチの2つのチェロ協奏曲に、ブリテンのチェロ交響曲。さらには、カバレフスキー、ハチャトゥリアン、ルトスワフスキ、シュニトケ、バーンスタイン作品などのほか、日本の外山雄三なども名を連ねる物凄さです。 まさに彼の存在が、チェロ人気とレパートリー拡大に繋がったことは間違いありません。師でもあるショスタコーヴィチのチェロ協奏曲の初演は1959年10月4日。ロストロポーヴィチのチェロと、ムラヴィンスキー指揮、レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で行われています。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。
家庭画報.com