【更年期の漢方の選び方】「もっと強い漢方薬ないですか?」と患者さん。強い漢方、弱い漢方って?
漢方カウンセラー樫出恒代さんは、先日、更年期の患者さんから「前回より改善したけれど、もっと強い漢方薬はないですか?」と聞かれたそう。たとえば皮膚疾患で出されるステロイド塗り薬には5段階の強弱があることが知られているけれど、漢方薬における強弱ってなに? この患者さんを例に解説していただいた。
「先生、もっと強い漢方薬ないですか?」
先日、朝いちばんの患者さんに「先生、もっと強い漢方薬ないですか?」と言われた樫出さん。 「はて?もっと強い…とは? 『この前、補中益気湯を出してもらったんですが、確かに疲れにくくなったんです。でも、もっとよくなりたいんです』 だからもっと強い漢方薬を!ということですね。わかります、その気もち。もっと、と望んでしまう気持ち。でもね、漢方薬に強弱ってないんですよ。よく他の患者さんにもこの漢方薬は弱いですか?とか強い方ですか? とか、聞かれること、あります」
ステロイド塗り薬には5段階の強弱があるけれど、漢方にとって強いのは、その人にピッタリ合うこと
「例えば、皮膚疾患で使うステロイド塗り薬は、効果の強弱について5段階に分類されています。これはとてもわかりやすいです。だいたいどんな人が使っても、そのような強弱があるということです。 しかしながら漢方薬の場合は、『どんな人も』というわけにはいかず、一人ひとり『証』というタイプがあり、その方にピッタリ合う漢方薬であれば、その方が求めている効果がしっかり出ます。それは、強さ弱さでは表せません。 漢方薬がよく効いてくると、身体がすっきりする、楽になった、とか、こころが明るく軽くなった、そんな風に言ってくださいます。それは、痛みがとれたり、眠れるようになったり、お腹がすくようになったり、便秘や下痢が治ったり、心配ごとが気にならなくなったり、パワーがでてきたり… と、その方が満足する結果が出てくることが、漢方の目的だからです。そして、その方のQOLが上がることが」
「補中益気湯」で気が上がってきたので、1か月後、気をかき混ぜて整える「加味逍遥散」に
「この方の場合、約1カ月前に処方した『補中益気湯』という漢方薬。その時の漢方カウンセリングでみると、『疲れがたまり、気力体力の低下、食欲不振、声に力がない』などの症状があり、この漢方薬をお出ししました。 飲んでいるうちに、元気になり食欲もでてきたのだけど、他の不調が出てきて、この漢方薬では弱いのではないか、と感じてきたのですね。 あらためて、漢方カウンセリングしていると『体力は出てきているけど、最近、気になることがあってもやもやしてきた、イライラもしている、ホットフラッシュみたいなカーッと熱くなることがある』などの症状が出てきたとのこと」 年齢も51歳で更年期。女性ホルモンのバランスが乱れていることも考えに入れ… 「上半身に気が上がってきているので『補中益気湯』はやめ、からだの上のほうに集まる『気』をかき混ぜて整えてくれる『加味逍遥散』をお出ししました。 この『加味逍遥散』、私は女性ホルモン様作用があるように思うので、更年期障害といわれる症状には効果的で、特に気が上がりやすいホットフラッシュなどになりやすいタイプの方には良いと思います。 今までの『補中益気湯』という漢方薬は、升麻(しょうま)と柴胡(さいこ)という漢方生薬が、気を上げるという升堤(しょうてい)作用があり、気が上がりすぎてしまうことでこの様な症状が出たのかもしれません。 ホットフラッシュがある方やのぼせやすい方は、『補中益気湯』を飲む際は気をつけてくださいね」