「10代は無敵だった」元19・岡平健治、「風呂なしトイレ共同」から経営者へ
バンド活動を続ける後ろ盾は何もなかった。岡平はそれまで趣味で集めていたランボルギーニやコルベットなどのスーパーカーをすべて売り払って現金化し、当座の資金を確保した。 2010年にRockFord Records株式会社を設立し、千葉をはじめ、3B LAB.☆Sのメンバーを社員登用した。一方、自身はソロベストアルバムをリリースし、2008年以降も毎年自走ツアーを続けるなど、精力的に音楽活動を続けた。 「いまは売れることだけがすべてではない。働きながらでも音楽に携わることはできるし、続けることで見える景色がある。だからこそ、僕がその環境を用意してあげたい」 そう語る岡平は、2012年10月に、自社ビルとして東京・中野に「ロックフォードビル長者橋」が竣工。音楽スタジオとライブハウスを併設し、現在は社員をはじめ、ミュージシャンや音楽関係の仕事に携わる人々が居住する。 少数でもファンが集い、ミュージシャンが生計を立て、音楽が紡がれていく。そんな「小さな経済圏」を岡平は目指している。 その背景にあるのは19時代から肌で感じていた音楽業界の変化だ。CD売り上げは1998年 をピークに右肩下がりとなり、今ではサブスクリプションモデルが登場、YouTubeなど様々なチャネルで音楽が消費されるようになっている。 「僕は日本で、音楽が一番夢のある時期にデビューして、その後業界が縮小していく様子を見てきた。本当に、本当に才能ある人がメシを食えない現実も見てきた」
「岡平健治のようなミュージシャン」を求めて
岡平の取り組みは東京を中心に地方にも広がっている。今では沖縄県浦添市などにも同様に拠点を増やし、雇用する社員も10人に増えた。近隣の大学や専門学校からインターンを受け入れ、若い世代に音楽業界への門戸を開く。会社の代表取締役社長を務めるのは、盟友の千葉、常務は同じく3B LAB.☆Sのギター・畝沖修司だ。 「振り返ればメジャーデビューする前、僕が家賃1万8000万円、千葉ちゃんが2万円の風呂なし共同トイレのアパートに住んでた貧乏ミュージシャンの頃、 コンクリート打ちっ放し、ガラス張りのおしゃれなビルの前を通りかかって、『いつかこんなビルに住みたいよね』なんて、夢を語ってたところが、いま僕らの拠点になってるんです。地下にライブハウスや本格的なミュージックバーをつくって、お客様の3割くらいは海外からの方で。楽しそうに音楽を聴いてるのを見ると、『音楽の力ってすごいな』って思うんです」