「新聞が届かなくなる日」がやってくるのか…80代が配達をする「地方のギリギリの現実」
進行する人口減少と外国人労働者の活用
従業員の年齢構成の高齢化が進み、人材獲得のためには報酬水準も引き上げざるを得ないが、経営としては利益の確保も考えなければならないなか、同社はぎりぎりの選択を迫られている状況にある。 ここからは、全地域にユニバーサルにサービスを提供していくというこれまで新聞配達という事業が地域に果たしていた役割を諦め、利益が出るところに集中してサービスを提供することも考えざるを得ないという。 「弊社の配達エリアは広域で、市の中心部はまだまだ人が多いので配達効率は良いですが、区部に一戸一戸配達するのは、ビジネスとして限界が来ていると思います。このため、ここ数年で、区部については、毎朝区長さんにまとめて配達をする形に変更をしました。それでもなんとか損益分岐点を少し割るくらいのレベルに抑えられているというくらいです。 私は市のインフラを検討する委員もやっているのですが、区部なんかはたとえば昔は200人いた地域が、いまはもう5人になってしまっているところなどがかなり出てきています。こういった地域に水道なんかのインフラを維持・修繕、または新調したりすべきかという議論をしています。 市役所は議員の票の問題もあるからか無理だとは言わないのですが、誰かがもうできないんだと言わないといけないと私は思っています。ビジョンを持ったリーダーがコンパクトシティを目指すんだと、思い切ってやらないと地域全体が共倒れになってしまいますよ」 これから人口減少が進んでいく中で、すべての地域が横並びで発展していくという未来は実現することができない。企業も同様である。労働力人口が減少していく中で、すべての企業が痛みなくこれまでと同じように存続していくことは不可能だろう。 人口が減少して人材の獲得がますます難しくなる未来を避けることができないなか、多くの経営者の視線の先には、海外の安くて豊富な労働力がある。 「私たちの事業の人手不足も深刻で、このままでは事業を営むことができなくなります。そこで、最近では海外からのインターン生の受け入れを始めました。もちろん来てもらう以上は、海外の人に満足して仕事をしてもらえるようにしっかりとした環境を整えています。 渡航費用やブローカーへの費用の一部負担、仕事をしているときの部屋の用意までしています。それでも海外の人はやる気をもって一生懸命に働いてくれますから。地方では若い人がどんどん減っているので、元気な人に働いてもらいたいと思えば、もうこういった人材に頼らざるを得ないのです」 つづく「人が全然足りない…人口激減ニッポンの「人手不足」が引き起こす「深刻な影響」」では、日本経済がなぜ「こうなって」しまったのか、人材獲得競争が活発化する状況で企業はどうすればいいのか、個人はどう生きるのか、掘り下げていく。
坂本 貴志(リクルートワークス研究所研究員・アナリスト)