生成AI、大学教員が知っておくべき10の活用法 教育や研究の質向上に役立てることが重要に
教員は業務効率化や質の向上を実現できる可能性がある
大学教員は、教育活動、研究活動、事務作業など、さまざまな業務で生成AIを活用することで、業務効率化や質の向上を実現できる可能性があります。以下に例を挙げます。 <授業関連で使う> • シラバス作成の効率化 生成AIに授業の概要や学習目標を入力することで、基本的なシラバスの構成案を自動生成できます。 • 小テスト問題の作成 小テスト用の選択式の問題を生成AIに作成してもらうこともできます。さらに解説もつけてもらえます。ただし、正確でない出力もあるため、教員自身が最終チェックすることが重要です。 <研究関連で使う> • 論文へのフィードバック 論文の草稿を生成AIに入力し、査読者としてのレビューを受けることも可能です。最新のモデルだと鋭いコメントを出してくれることもあり、筆者も実際に利用しています。 • 英文校正 生成AIの英語に関する能力は高く、自身の英文の校正をしてもらうことも可能です。ただし、回りくどい表現が出てきたり、専門的な表現はうまく扱えなったりするため、最終的には人間の確認が必要ですが、クオリティの高い校正をしてくれることが多いです。 <事務で使う> • 事務作業の効率化 機密情報を扱える環境が確立されている場合、または入力内容に機密情報を含まない場合は、学生やほかの教員への連絡事項、会議の議事録作成、報告書の作成などを生成AIにサポートしてもらうことで、事務処理の負担を軽減できます。 • 多言語対応 留学生向けの資料作成や、海外からの問い合わせ対応などにおける、翻訳で生成AIを活用することができます。生成AIを用いることで国際化に対応した事務処理が簡易に実現できます。
生成AIを利用するうえでの注意点
生成AIは非常に便利なツールですが、その利用にはいくつか注意点があります。これまでの活用例の中でも注意点に触れましたが、改めて生成AIを利用する際の注意点を以下に挙げます。 まずは、出力の信頼性が高くありません。生成AIは、あたかも真実のように見える文章や情報を生成することがありますが、実際には事実と異なる情報を生成することがあります。 生成AIが出力した情報は鵜呑みにせず、必ず信頼できる情報源と照らし合わせて確認することが重要です。 基本的に個人情報・機密情報は入力しないほうがいいでしょう。外部サービスの生成AIに個人情報や機密情報を入力することは、情報漏洩のリスクを高めます。 学内に環境が整っていない限りは、個人情報や機密情報は入力せず、一般的な情報のみを入力することをおすすめします。 著作権侵害に配慮する必要もあります。生成AIが生成した文章や画像が、既存の著作権を侵害している可能性もあります。 生成AIの出力結果をそのまま利用するのではなく、類似する文章や画像がないかを確認する、あくまでも出力は参考程度に利用して自分オリジナルの文章や画像を作成するなど、著作権侵害に十分配慮する必要があります。 ほかにもバイアス、言語格差、データの学習、透明性など多様な課題が山積していますが、大学教員は、生成AIの特性を理解したうえで、教育や研究活動に活用することで、活動の効率化、質の向上が見込めるでしょう。ただし、生成AIはあくまでもツールであり、その出力結果を批判的に吟味し、適切に利用することが重要です。 (注記のない写真:Supatman / PIXTA)
執筆:東京大学 大学院工学系研究科 附属国際工学教育推進機構 准教授 吉田塁・東洋経済education × ICT編集部