【パリ五輪卓球】100種類以上のサービスを操る兄弟。超個性的なメガネのルブラン兄弟、地元観客を沸かせ、2回戦へ進む
「個性と自由」。協会の想像の遥か上を行くメガネ兄弟
パリ五輪卓球競技で地元フランスの観客を沸かせるのはルブラン兄弟。20歳の兄、アレクシスと17歳のフェリックス。南フランスのモンペリエで生まれ育ち、急激に力をつけた二人に世界中の卓球ファンは釘付けになっている。 個性ポイントその1。 二人はメガネをかけてプレーする。コンタクトレンスを常用するのが当たり前の卓球の世界で、子供時代からメガネを外さない二人。理由は不明。 個性ポイントその2。 普通ではない練習方法。この兄弟の練習を見た人は誰もが驚く。練習をやりながら10分きざみくらいで全く別のことをやる。たとえば、フットワーク練習をしていると思ったらカードゲームをやったり、いきなり他のスポーツをやってみたりと。飽きっぽいのではなく、コーディネーション(調整)能力を高めるためとのこと。当然のことながらフィジカルトレーニングも特殊で、卓球の概念を変えた、異種のメニューに取り組む。 個性ポイントその3。 モンペリエから離れない練習環境。今までのフランス選手はパリ郊外のINSEPと呼ばれるナショナルトレーニングセンターでの集合訓練が常だったが、ルブラン兄弟は地元のモンペリエから離れず、このクラブに練習相手を呼んでいる。また通常、男子選手は女子選手と練習することを嫌う。ボールの質が違いすぎるからだ。ところが、兄弟は女子選手であっても、男子には少ない変化系用具を使う選手であっても誰とでも練習をやるとのこと。これもコーディネーションを高める方法なのだろうか。 個性ポイントその4。 卓球は11点制で5ゲーム(団体)か、7ゲーム(シングルス)を行う。サービスは2本交代なので、もし1ゲームで10-10のジュースとなれば、選手は10本のサービスを出すことになる。普通は相手の弱点を探しながら前半・中盤・後半とサービスの組み立てを行うのだが、ルブラン兄弟は1本ごとにサービスを変える。相手は配球を全く読めない。同僚の五輪代表ゴーズィは「あの兄弟は100種類以上のサービスを持っている」と語っている。 個性ポイントその5。 この二人の急激な成長曲線は驚くしかない。兄のアレクシスは右ひざの故障もあり、2年前は世界ランキング37位で、現在は16位。弟のフェリックスはすさまじい。2年前の15歳の時に69位だったランキングは、1年前に16位、現在は5位で上には中国のトップ選手しかいないのだ。 個性ポイントその6。 弟のフェリックスはペンホルダーというアジアに多い握り方。つまり箸やペンを持つような握り方で、世界の90%はシェークハンドグリップ。小さい頃にクラブにいた中国選手を真似て、このグリップにしたフェリックスはアジアでも希少となったこのグリップで世界のトップグループにいる。 フランス卓球協会としては、2028年のロス五輪がこの二人の適正時期と考えたいたのだが、二人の強さが協会の考えのはるか上を越えていった。 にわかに男子団体、シングルスでメダル候補になっているメガネ兄弟から目が離せない。
卓球王国 今野昇